たった一つの存在







「結構店が出ているな。何か食べるか?」
「今日は週に一度の市の日だから…。それよりガウリイ」
「あの飲物なんてどうだ?好きだろう?レシスジュース」
「いや…だからあの…」
「どうした?リナ」
にぎやかな大通りでも彼らは道ゆく人の注目を集めていた。
長い金髪と蒼い瞳。端整な顔立ちのガウリイ。
艶やかな栗色の髪の毛に印象的な深紅の瞳。儚げな外見と独特の存在感。
二人の容姿もさる事ながら―――――
「え…と、いつまでこのまま?」
リナガウリイに方を抱きよせられる格好で真っ赤になっていた。
いくつかの視線が無遠慮に注がれている。
ガウリイはにやりと笑うと、彼女の耳元に囁きを落とした。
「嫌か?オレとこうするのは」
「ええ!?いやあの・・・イヤって訳じゃなくって…その…」
真っ赤になって予想通りの反応を返すリナにガウリイは声をあげて笑った。


「美味し・・」
人気の無い公園のベンチでリナは一人レシスジュースを飲んでいた。
ガウリイは用事があるといって一人で出ている。
リナは昔の事を考えていた。
自我を持った自分の世話をしてくれた金髪の青年。
一緒に行くかと手を差し伸べてくれた金髪の青年。
自分にとって彼は、親であり兄であり、唯一の存在。
いつか本で読んだような多くの人の中でたった一人の存在ではない。
その文字通り、彼以外にはいないのだ。
自分を知っていてくれて、自分が知っているのは。
でもそれ以外にも…。
リナはふと頬を緩める。
彼といる時の安心感、幸福感。いない時の喪失感、不安感。
この感情の名前を自分はきっと知っている。これはきっと…
「リナ」
声に顔を上げればそこにいる金髪の彼。
「どこに言ってたの?ガウリイ」
「ああ。これをな。」
言ってガウリイは彼女の手に自分の手を重ねた。
自分の手を見てガウリイが手の中に置いたものがなんだか分かったリナは目を見開い
た。
「さっきずっと見ていただろう?だからプレゼントだ。」
彼の優しい言葉に思わず笑みがこぼれる。
青い宝石のついた髪飾り。
彼の体温で温まった金属の感触が心地良い。
でも…。
「ありがとう。でもこれね、ガウリイがつけたら綺麗だろうなって思ってみてての
よ?」
「え?」
「だってガウリイってば本当に綺麗な顔しているんだもの。
きっとドレスとか着たら似合うわ。」
ニコニコわらっているリナにガウリイは溜め息を一つついて。
「男がそんな物来て似合っても嬉しくないぞ。」
苦笑いをする。
そしてリナの手の中の髪飾りを取り栗色の髪に着けてやる。
そしてやや緊張した面持ちで彼女をぎゅっと抱きしめた。
「いつか…オレのためにドレスを着てくれるか?」
ガウリイの唐突な問いにリナは
「はい。人間とは言えないようなあたしで良ければ」
言ってくるりと振り向ききゅっと抱きつく。
「お前は人間だよ。この世界の誰よりも。」