虚 空 の 月 |
街の中心部、市場が並んでいて活気に満ちている。 観光客にも人気なもんだから、それを目当てに結構な数の屋台も軒を連ねている。 「なあリナ、あれ美味そうだぞ〜」 そう言って、ガウリイがさり気なくあたしの肩を抱き寄せて、そちらに注意を促そうとした。ようだ。 が、あっまーい。 ひょいと体をかわしてガウリイを避ける。 伸ばした手がとっても寂しそう。(はぁと) 最近のガウリイは、やたらとあたしに触りたがる。 もちろん以前から髪をグシャグシャ撫でられたり、肩をポンポンと叩かれたり、ということは多々あった。 が、現在のガウリイは、その頃とは根本的に違うのだ。あたしとのラブラブ(恥)なスキンシップを求めている。らしい。(恥恥) そしてそれを、あたしが避けている、というわけだ。別に触られるのが嫌というのではない。もちろん恥ずかしいというのもあるが。それが主な原因ではない。 ではなぜか、というと。 話は数日前に遡る。 ****************** いつものように朝がきて、そして知った。 あたしは独りぼっちになったのだと。 茫然自失のあたしは、時間というものを感じなかった。宿屋のおっちゃんが声を掛けてくれなければ、もう昼になっていて、そして。 ・・・自分が泣いていることにも気づかなかっただろう。 あたし、ガウリイに嫌われてたんだ。気づかなかった。そんな素振りちっとも見せなかったから。 ガウリイは優しいから。きっと見捨てて置けなかったんだね、可哀想なあたしが。あたしが危険に付きまとわれていたから。義務感みたいなの持ってたのかな。だから今まで、嫌々ながらもあたしの側にいてくれたんだ・・・。お人好しだから・・・。 ??? ・・・ガウリイは優しい。お人好しだ。 そのガウリイがどうして。 紙切れ一つで姿を消したの? いくらあたしを嫌っていたとしても。 今までずっと我慢してこれたんなら、最後にちゃんと別れの挨拶くらい・・・してくれるでしょ? ガウリイ、あんたなら。 だったら、だったらどうしてこんな別れ方・・・。 もしかして、もしかしたら。 他に何か理由があるんだろうか? あたしが嫌いなんじゃなくて? 他に何か・・・。 わからない。 けど。 確かめなければ。 何か厄介事に巻き込まれているのかもしれない。 そんなんじゃなくて、ホントに嫌われてたんなら。 辛いけど。 悲しいけど。 でも。 あたしと別れることでガウリイが幸せなら。 それをこの目で確かめよう。 だって、ガウリイが厄介事に巻き込まれていないと、どうして断言できる?その可能性がゼロでない限り。 あたしは見届けなければならない。 今まで一緒にいてくれて。 あたしを守ってくれて。 あたしを幸せにしてくれた。 ガウリイを犠牲にして。 せめてその償いに。 せめてそのお礼に。 追いかけよう。 ガウリイに幸せになってもらうために。 確かめるのは怖いけど。 涙が溢れてくるけど。 あたしはどうでもいい。 あたしにとっての最優先事項は。 あたしの幸せじゃない。 あんたの幸せなんだから。 ね。 幸いにも、ガウリイはブラストソードを持っていったようだ。 あれにかかっている魔法を目印にして、あたしはガウリイを捜し出せる。 しばらくして。 準備を整えたあたしは、翔封界を唱えてた。 ガウリイの本心を知るために。 ****************** ま、その後色々あって。あたしは今も、ガウリイと一緒に旅をしている。 え?肝心な部分が抜けてるって? そっそれはそのお〜。(照れ照れ) 色々あったのよっ!! うう〜〜〜〜〜。 おっ、お互いの気持ちを確かめ合って、そのお〜世間一般でいうところのハッピーエンドってやつなのよっ!!(赤面) それなのに何でガウリイを避けるのかって? っ!!! 決まってるでしょっ!! それもこれもみーんなガウリイが悪いんだからっ!! 自業自得なのよっ!! あの時は、すんごくいい雰囲気だったのに。 その後が最低・・・。 あのエロくらげが宿に駆け込んで・・・。 そうよね〜二人とも寝不足だもんね、気が利くなあ〜なんて、のんびり考えてたら・・・・・。 部屋を一つしか取らなかったのはまあ許す。 ・・・だって、目が覚めて、また一人になったら嫌だし。一緒に寝たら安心できるだろうな〜なんて。 思っちゃったのよ。 その時だけよ、寝不足で頭がちょっと呆けてたのよ。 それなのにっ!!!!! いきなりあたしを押し倒したのよ!? 朝っぱらから。 信じられない。 何考えてんのよ、あのエロくらげ。 だから!! スリッパで思いっきり殴って、呪文で吹っ飛ばしてやったわよ。 全く。 そうなるのが嫌なのかって? うみゅう〜〜〜嫌ってわけじゃあないのよ? だって、あたしは、そのう〜ね?ガウリイが好きなわけだし。いつかはそうなってもいいかなあ〜〜〜なんて。思ってるわよ。(赤面) けど、順序ってもんがあるでしょーが!! きちんと段階を踏んで。 それでもって自然にそうなる、ってのが理想かな〜って思うのよ。 やっぱり初めてのときは、それなりにいい雰囲気じゃないと・・・。 その辺の微妙な乙女心が、あのエロくらげには理解できてないみたいなのよね。 まあくらげなんだから仕方がないといえば、そうなんだけど。 でも、これは罰なんだからっ!! このあたしを泣かせたのよ!? 簡単に許してもらえると思ったら大間違いなんだからねっ!? その上、護衛を仕事の途中で放棄した、とかで。 違約金を払わされる破目になって。 それについては、忘れてたあたしにも多少責任があるから、大きな顔はできないけど。 無駄金使うとやっぱり腹が立つのよ。 となると、八つ当たりするならガウリイに、ってことになるでしょ?一番側にいるんだから・・・。 だから・・・・・。 早くあたしの気持ちに気づいてよ。 あんまり遅いと・・・今度はあたしがあんたを置いてくわよ? ね、ガウリイ? |
ガウリイsideにも行ってみます? |