被保護者だから







ものすごく不本意なことだが、あたしには逃げることしかできなかった。
捕まえようとしてくる盗賊Aをかわし、髭面の盗賊Bを足払いでコケさせ、スキ
ンヘッドの盗賊Cにフェイントをかまし……ともかく逃げて逃げて逃げまくる。
初めのうちは粘っこい笑みを浮かべていた奴らも、次第に焦りだし、ついには怒
声をあげながら追いかけてくるようになった。
今も真後ろを「待ちやがれっ!」とか怒鳴りながら2人程追いかけてきてるのだ
が、「待て」と言われて待つ馬鹿はいない。そんなのは飼い主に忠実な犬だけで
充分である。
それにただ適当に逃げ回っているわけじゃない。
敵の手に落ちたからといって、囚われのお姫様よろしく「ただ助けを待つ」なん
てあたしの趣味じゃない! 足掻いて自力脱出でもしなきゃリナ=インバースの
名が廃るっ!
だからさっきから奴らに囲まれないように、そして悟られないように、少しずつ
ドアの方へと移動しているのだ。とにかくこの部屋から出られれば……
何とかドアに辿り着き、ドアノブに手をかける。
―――ガチャガチャ
……うそっ……開かない……!?
すぐ背後には盗賊達の姿。
……くっ……
あたしは盗賊達から身をかわし、折角辿り着いたドアから部屋の奥へと逆戻りす
る。
……くやしい……本来ならこんなやつら相手にもなんないのに……っっ!!!
だけど……いつまでも逃げてばかりってわけにもいかない。
はっきしいって、もう逃げ回るだけの体力がないのだ。
かといって、こいつらに捕まってやる気はない。それだけは絶対にない。
それにきっと…いや、絶対ガウリイが助けに向かってるはず。
となれば、あたしのやることは決まっている。
この状況をなんとか切り抜けて、一刻も早くガウリイと合流するのだ。
でも……
ドアからは離れ、しかもそのドアは開かない。
そしてすぐ後ろには盗賊達……っっ!?!?!?
―――ヤバイっっっ挟まれたっっっっっ!!!!!!!!!!
「随分と手こずらせてくれたな? お嬢ちゃん」
下卑た嗤い。
右側は壁。壁には窓もない。
前と後ろには盗賊達。半円を描くように徐々に広がって左側も塞いでいく。
じりじりと距離を詰め、あたしを壁に追い詰める。
背中に壁が当たる。
これじゃ逃げられない……!?
……せめて…せめて呪文が使えれば……っっ!!!!!
だけど呪文はすべて無効化され……ん? ちょっと待てよ?
たしか奴は「攻撃呪文をすべて無効化する結界を張っている」と言っていた。
……と、いうことは……
攻撃呪文じゃなければ無効化されない、ということなんじゃ……???
えーーーいっっ物は試しだ!
あたしは盗賊達から逃げながら呪文を唱える。
唱えるのは召喚の呪文。
前にセイルーンでやったように、今回も結界を破れるか鳩を呼びだして試してみ
るのだ。
それにしても……
だぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっもうっっっっっ!!!!!!!
普段「保護者」だなんて言っておいて……なんで助けに来ないのよっ!?
いつもはめちゃくちゃ過保護なくせにっっっっっっ!!!!!!!!!!
自称でも「保護者」なんて名乗ってるんだったら、とっとと来なさいよね!
こんなに遅いんじゃ「保護者」失格よっ!
そうよ…「保護者」失格にしちゃうんだから……
………………ガウリイ………………
あんたにはこのままあたしを捜さないで見捨てることもできるんだよ?
それでも今…あんたがあたしを助けに向かってるんだとしたら……
それはあたしがあんたの「被保護者」だから?
それとも別の理由?
もし…もしも「被保護者」だから助けるんなら……そんなのっっっ
あたしもう「保護者」なんていらないんだからっっっっっ!!!!!!!!
キッと盗賊達を睨みつける。
―――もぉっ! 来るなら早く来なさいよ! 鈍感クラゲっっ!!!!!
「水母召(ゼラス・ゴート)!!!!!」
目の前に巨大なクラゲが現れた……
……って…あれっ……?
「リナっ!」
ぱりんとドアが割れてガウリイが現れた……
……あれぇ……???

クラゲは強かった……。
本当に強かった……。
ガウリイの出番がまったくなかったほど強かった……。
あっという間に盗賊達を薙ぎ倒し、今はあたしを背後に庇って護っている。
そしてガウリイは……よく見ると傷だらけだった。
慌ててあたしが治癒(リカバリィ)をかけると、初めて怪我に気がついたようだ
った。
治療中、ガウリイは項垂れてこう言った。
「すまん……リナが呼んでたのに……思ったよりてこずっちまって……」
呼んでた……って…あたしが?
いつ?
それに、てこずった?
ガウリイが?
だからこんなに傷だらけになったの?
でもガウリイをてこずらせるような相手なんて……
―――あっ!? まさか…まさかっっ!? あの魔族相手に戦ってきたの!?
たった一人で!?
「なんで…なんで来たのよ……?」
そんなに怪我までして……魔族相手に一人で戦うなんて無茶して……
「保護者」だなんて言っても初戦は自称じゃない!
なのに…なのにどうして……?
「そりゃあ……」
ガウリイは頭を掻きながら、ぼそっと何事かを呟いた。
―――ぼんっ
瞬間、顔が一瞬で沸騰して湯気がでるほど真っ赤になったのが自分でもわかる。
……なっっっっっっっっ?????????
なのにガウリイは何事もなかったかのようにクラゲに話しかけている。
……聞き間違い……だったのかな……???
「大事…だから」って……聞こえたんだけど……。
う〜〜〜〜〜みゅ……?????
ガウリイは何故かにこやかにクラゲと握手してたりする……。
クラゲの方も、盗賊達には容赦なかったくせに、何故かガウリイには危害を与え
ようとしない……。
……こいつら……なんか友情芽生えてそうなんですけど……。
クラゲ同士で相性いいのかな?
………う〜〜ん………
なんか聞き直すのも恥ずかしいし…こいつら見てるとあれこれ考えてるの馬鹿ら
しくなっちゃうし……って、あれっ?
あたし、鳩を召喚しようとしてたのに、何でクラゲを召喚しちゃったんだろ?
そりゃまぁ…あの時クラゲのこと考えてたけどさ……あの呪文ってたしか某女魔
道士のオリジナルで……彼女、クラゲと相性良かったからできたわけよね……?
それに呪文ってのは術者の集中力が……あっ、そっかぁ……あたし…無意識にあ
いつのこと呼んじゃってたんだ……ガウリイに来てほしいって思ってたから……

ガウリイもそれに応えてくれた…のかな?
あたしが「呼んでた」とか言ってたし……
な〜んてねっ☆
でも…ふふっ「クラゲ召喚」かぁ……
"本物のクラゲだけでなく、同時にクラゲ頭も呼び出すスペシャル呪文"
……なんちゃって(笑)。
で・もっ! これって"リナ=インバース専用"だからね(はぁと)
だってこれってリナちゃんの恋心が編み出した無敵の呪文だも〜ん♪

  もう焦ったり不安になったりはしない
  だって来てくれるから……
  ガウリイは来てくれるってわかったから……
  呼べば来てくれるんだってわかったから……
  いつかあんたが「保護者」を辞めても、
  あたしが呼んだらちゃんと来なさいよ?
  だから今は"「被保護者」だから"って理由でもいい
  いつか必ず振り向かせてみせるから
  あたし頑張るから
  自分のペースで頑張るから
  だから……いつか、ちゃんと気付いてね

なんだか心の奥が軽くなってきて……あ〜〜〜〜〜〜なんか疲れちゃった……。
クラゲも助けに来てくれたことだし、もう大丈夫だよね……
あたしは目を閉じて、訪れてきた睡魔に身を委ねた……。

その後―――
ガウリイは近くの山小屋にあたしを運んでくれたらしい。
雨が降ってきて困ってた時にこの小屋を発見したんだって、目が覚めた時にガウ
リイが教えてくれた。
その時あたしが雨に濡れないようにクラゲ(本物)が傘の役割をしてくれて、こ
の小屋に着いたら帰っていったそうだ……。便利だぞクラゲ……。
あたしは…というと……今、料理をしてる。しかもかなり気合いを入れて。
この山小屋、つい最近まで使われていたらしく、食料品が結構残ってたのだ。
まだ新しい野菜や肉があることからすると……ひょっとしたらこの小屋の持ち主
は、あの盗賊団に数日前に襲われて逃げ出したばかりなのかもしれない……。
だとしたら持ち主の人には悪いけど……ま、ある物は利用させてもらいましょ♪
持ち主もきっと盗賊団が持ち去ったと思うわよ……たぶん……。
一通りできあがって、料理をテーブルに並べる。
うん。我ながら上出来だわ(はぁと)
ガウリイはひたすら幸せそうに頬張っている。
いつも恒例の「お食事バトル」も、今日は殆どガウリイに譲ってる。
だって本当はこれ、お礼なんだもん。
魔族と戦って……あんな怪我までして来てくれたお礼。
「リナ、おかわり♪」
「ったくもぉ…もう少しちゃんと味わって……はいはい」
文句を言おうとして、不覚にもガウリイのにぱっと笑った顔に何も言えなくなっ
てしまった。
本当は感想とか…ききたかったんだけど、な……。
あたしはスープのおかわりをよそいながらふと窓の外を見る。
外はまだ雨が降っていて、窓ガラスにはガウリイが映っていた。
「……ありがと……」
ガラスに映ったガウリイの口に、一瞬だけ唇をつける。
恥ずかしくて本人には絶対できないから。
今のあたしにはこれが精一杯のアプローチ。
背伸びしたりぶりっこしたりなんかもうしない。
自分のペースでやっていくって決めたから。
いつか「保護者」と「被保護者」の関係から抜け出して
あいつを振り向かせるまで……
大丈夫。
あたしにはあの呪文がある。
クラゲだけでなくクラゲ頭の誰かさんまで呼び出せちゃうすごい呪文が。
こんなの使えるのって、このあたしくらいなものよねっ!
胸の奥から自信が沸き上がってくる。
だって……
なんてったって恋する乙女は無敵なんだから♪



おわり♪









うにゃぁぁぁぁっのら様ぁぁぁっサンキュ〜〜〜っすぅぅぅぅっ
リナちゃんっプリチ〜〜〜vv
クラゲ・・・いいとこ根刮ぎ持っていくとはっっやるなっっ
(・・・・注目すべきトコはそこじゃないと思うわ)
むむっ・・・・そっかぁ?
飛鳥はあのクラゲが気に入っちゃったぞぉぉぉっっっ
(・・・同類だからじゃない?)
くぅぅぅっ・・・そーかも♪てへ☆
のら様っホントにホントーーーにありがとうございましたvvv