被保護者だから







あたしが「被保護者」だから、あいつはあたしを「子供扱い」してんのよね。
なら―――言ってみようか? もう「保護者」なんていらないんだ、と……。
だけど―――あたしが「被保護者」だから…「子供」だから、あいつは―――ガ
ウリイは「保護者」として傍にいてくれてるのよね……。
と、いうことは……ガウリイは「保護者」を辞めたら、あたしの傍から離れてい
ってしまうのだろうか……?





あたしはあいつに「子供」としか思われてない。
だから少しずつこのあたしの魅力を教えて、絶対あたしに惚れさせてみせるっっ
!!!……と、決意して一週間。
実は…未だに「保護者」と「被保護者」の関係から脱出できてなかったりするの
だ。これが。

あたしはこの一週間、いろんなことを試してみた。
な・の・にっ!
あのクラゲときたら……

基本はまず優しい笑顔よねっ♪ …とか思って、ある朝「おはよう(はぁと)」
と笑顔でにっこり挨拶してみた。
……しかし、ガウリイは真顔でキッパリと言ったのだ。
「リナ…昨日盗賊いぢめ行っただろ?」と……。
―――すぱぱぱぱぱぱぱーーーんっっ…
清々しい朝にスリッパの攻撃音が鳴り響いた……。

またある時は、道の真ん中に小石を発見して、わざと躓いて抱きついてみた。
なのに……あのクラゲ、何て言ったと思う?
「何やってんだ? 腹減ったのか?」よっ!?
この花も恥じらう可憐な乙女(あたしのことよっ!)が、背中に密着してるって
ぇのに…な〜んでそーなるかなぁ???
あたしが思わず炸弾陣(ディル・ブランド)ぶちかましちゃったのは、不可抗力
よ! 絶対っ!!!

それでもめげずに、人気のない森の中で「疲れたぁ〜〜〜もう歩けな〜い(はぁ
と)」とぶりっこもしてみた。
だけど……ガウリイは思いっきりジト目で一言。
「お前さんが道間違えたりするからだろーが」
「っっ…火炎球(ファイアー・ボール)!!!」
―――結局……森が燃えて目的地には着いた。
が、ガウリイが焦げた。
森が一つ消えたのは、あたしが道を間違えたというガウリイの指摘が図星だった
からではない。……ほんとだってば。
……まぁ…ちょっぴしやりすぎたかもしんない……てへっ(はぁと)

……他にもまぁ…いろいろとやってみたわよ……だけど…悉く大失敗!
こんなに失敗ばっかしだと、リナちゃん悲しいっ! しくしくしく……
……って一人でこんなことやってる場合じゃない!
こんだけ失敗しちゃうと、流石にストレス溜まっちゃうのよね〜〜〜。
この溜まりに溜まったストレスは、や〜っぱ発散して来なきゃ♪
タイミング良く、宿屋のおっちゃんから山に巣くう盗賊団の話を聞いちゃったこ
とだし、ふっふっふ…待ってなさいよ♪ 盗賊さん(はぁと)
あたしはガウリイがお風呂に行っている隙に、窓枠から身を躍らせると、お宝さ
ん…もとい、盗賊達の待つ山へと向かった。


アジトはあっさりみつかった。
盗賊団も呆気なく壊滅し、こんな山の中にしては割といいお宝さんも手に入った

本来なら上機嫌で宿に戻るところである。
が……何かがおかしい。違和感を感じる。
そう、これは……

突然視界が真っ黒に染まる。
―――っっっ!?!?!? しまったっっ!!!
そう思った時にはもう遅かった。
「ガ・ウ…リ……」
なんとか目を開けようとしたけど。声を絞り出してみたけれど。
あいつの名前さえはっきりと呼べないまま
あたしの意識は闇に呑まれていった……