お祭りの夜は… 〜がんばれ(はあと)ガウリイくん!(その1)〜 |
とある宿屋の、どこにでもあるような食堂兼飲み屋に、今、2人の男がいた。 2人――文句なしに美形の金髪碧眼の青年と、筋肉質な体つきの黒髪黒瞳の中年男。 2人の関係はというと…単なる客と店の主人にすぎないのであったが、こうして並んでいると 立場も容姿もまるでちがうこの2人が、ひさしぶりに会う親子の様に思えてくる。 草木も眠る時刻であるが、2人はそんなことはお構いなしといった感じで、互いに酒を 飲み交わしていた。2人とも口にしているのはかなりアルコールのキツイ酒であったが、普段と 変わらない様子で話をする。 「にいちゃん、知ってるかい?」 「…何をだ?」 「にいちゃん達、このままこの街道を行くんだろ? 実はなこの次の村で、明日から祭りをやるんだよ。きれぇな祭りだぜぇ」 「へぇ…」 「なんだよ、その気の無い返事は。…いいか、よく聞けよにいちゃん。 その祭りで、あのじょうちゃんに告白しちまいな」 「!」 思いがけない店の主人の言葉に、青年は目を見開いて驚いた。 「気づいてないと思ったか?おまえさんがあのじょうちゃんに向ける視線は、兄とか父親って もんじゃねぇぜ。…好きなんだろ?じょうちゃんがよ」 青年はしばらく答えに迷った後、観念したように嘆息した。 「…あぁ」 「じゃぁいい機会じゃねぇか。しちまいな。人間、正直が一番だぜ?」 青年の胸中にさまざまな想いがめぐり… 「…そう…だな」 言葉を返した彼の顔は、静かに微笑んでいた。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ これといって特長の無い、ごくごく普通の街道をオレ達は歩いていた。 この道がどこに通じているのかなんて、オレは知らんが天気は最高だ。絶好の旅びよりといえる。 それに、いつもそばに彼女がいてくれれば、オレはそれでいい。 今もオレの目に映っている、栗色の髪の少女がいれば。 ……しっかし、最初は満足していたこの状況が、最近はかーなーりつらくなってきている。 それというのも… 「どしたの?ガウリイ?」 とその時、前を歩いていた少女――リナが、こちらを急に振り向いた。 どうやら、オレの視線に気づいたらしい。 栗色の髪、意思の強さを秘めたルビーのような瞳を持つリナ。 …………………………………………………………………………… ……あぁっリナ、なんてかわいいんだぁぁぁっ 今この場でリナを押し倒すことができたらぁぁぁぁぁっ ……………はっ。 なっ何を考えてるんだオレは!! オレはリナの『自称保護者』を名乗ってるんだぞっ それに…それに…そんなことしてみろっ…リナにどんな目にあわせられるか… い…いや、ドラグ・スレイブだけならまだいい。(いいのか? by作者) 再悪の場合、リナに別れを告げられる可能性だって…… …………………………………………………………………………… ……だめだぁっそれだけはなんとしても防ぐんだっ!ガウリイ=ガブリエフぅぅぅぅぅぅぅ …はぁ…はぁ…はぁ。 「ガウリイ?」 そんなオレの心の葛藤なんて、当然リナは知る由も無く、ただ何事かと首をかしげている。 その姿もまた―――くぅ。かわいい… …はっいかんいかん。なんとか話をそらさなくては。 「大丈夫だ、リナ」 今日は大事なアレを実行にうつすんだ。ここでリナに不信がられてはいけない。 う〜んと、まわりに何か…おっ 「そう?ならいいけど… てっきり、とうとう、あんたののーみそが溶けて抜け出ちゃったかと思っちゃったわ」 「お前オレを何だとおもって…って…いや、なんでもない。 〜〜ほッホラ、あそこに見えるのって村じゃないのか?」 オレの言葉に、急に目を輝かせるリナ。 …たくっ。文句言ったらファイヤー・ボールってのは卑怯だよな。 まぁ、お目当ての村についたことだし、よしとするか。 見て見ろっこの澄み渡る青い空! 白い雲!! 輝く太陽!!! すべてがオレを祝福しているッ。 ふっふっふ…今日だ。―――今日でオレは生まれ変わるんだあぁぁぁぁ…… そう…オレの計画とはすなわちっ この村でやる祭りの最中にリナに告白すること!! 『保護者』と名乗ってはや数年。何気に自分の気持ちを伝えてはいるものの、 いっこうにリナがそれに気づく気配はない。 ――それならさっさと本音を言ってしまえ。そう言うかもしれないが、正直言って オレがリナへの気持ちに気づいた時には、もう『保護者』として一緒にいた時間が長すぎた。 リナのそばには、『保護者のオレ』でしかいられない。 ――だからずっとだまってきたが…はっきし言ってもうそれも限界だ。 ならばいっそ言ってしまおう。そう思ったのは昨日の晩。 泊まった宿屋の親父と話をしていた時だった。 言われて初めて気づいたことだったが、他人に言われたことで、なんだかすっきりしたような 気がしたのは、なんでだろうな。 もしダメだったら、その時考えればいい。そんなことを考える勇気が持てたのは、 やっぱり…リナのおかげだろうな。 ――なんて、歩きながらもリナのことを考えてる。 「ガウリイっ!あそこに食堂があるわよっ」 まったく…おまえってやつは… 「あぁ、メシ、食うかっ!」 食堂に入ってメシを注文しようとしたら、あることに気づいた。 人の気配が、目の前にたっているおばちゃん以外しないのだ。 リナもそれに気づいてるだろうが、無視して注文をはじめた。 しばらくして、たちこめるいい匂い。くぅ。たまらんっ。 「へぃっおまちっ」 『いっただっきまーすっ』 がちゃがちゃがちゃ 「ひはっ、はんてほほひやはるっ!」 「はによ…ほいへるはんははわるいんへほ!!」 「ほまえ、ひゃんとほひほんではらいえ!」 「はんはもへしょ!」 ごくごくごっくん 「くらえっ必殺!二段づきぃぃ!!」 「ひゃあぁっあたしのいとしいコロッケちゃんがっ! おのれガウリイ、こうしてくれるぅ!」 「だぁぁっ?!オレのてんぷらが!? それなら…こうだっ!」 「このっ」 「くらえっ」 「なにを!」 ……この後、オレ達の食事合戦は一時間近くをかけて続けられた。 「ひゃ〜おなかいっぱい」 「だな」 リナの言葉にオレも同意しながらお腹をさすった。 リナはこれ以上無いってくらい、幸せそうな顔をしてる。オレは、少し食べもんに腹が立った。 たくっ、リナにこんな顔させられるのはオレだけでじゅーぶんだ! その間もリナは手を動かしていて…あぁっ!オレのサラダがっ ちくしょう…こうなったら……! とオレがサラダの復讐を決意したその時、 「あんたら、祭りには行かないのかい?」 いきなり声がしたかと思うと同時に、テーブルに近づいてくるおばちゃんが一人。 あの、注文を取りにきたおばちゃんだ。 「ほまふり?」 「そう、うねめ祭りっていうんだよ」 聞き返したリナに、おばちゃんはうれしそうな顔で答えた。 あぁ…なるほどな。それが、あの親父が言ってた祭りか。 なんて、オレが納得している間も、どんどん2人の話は続いている。 「この祭りはね。この地方に伝わる『釆女物語』を伝える祭りなんだよ」 「『釆女物語』……? あの、1200年も昔って言われている、あの『釆女物語』?」 「そうだよ。若いのによく知ってるね、じょうちゃんは」 ほんと、リナっていろんなこと知ってんだよな。 う〜んいろいろ考えてたら、はらっへってきたな… …そういや、「うねめ」ってなんだ?よしっわからなかったらリナに聞いてみるか。 「すっげー昔なんだな。ところでリナ。一つ聞きたいんだが……」 オレの言葉に、すっげ〜いやそうに反応するリナ。 おまけになんか眼がこあい… 「何?あまりに馬鹿なことを言ってみなさい。フィリアからもらった、この 『モーニングスター改造版リナちゃん特製インバース印のぷりちぃスリッパ』でひっぱたくわよ?」 といって取り出したのは、スリッパの形をしたものに無数の刺が生えているモノ。 ……いったい…いつもどこから出してんだ?ソレ? 「リナ…それ…スリッパ…なのか…?」 頬に冷や汗たらしつつも、つっこむオレ。 「そうだけど、なんか文句ある? お望みなら…いまっ!すぐっ!…やってあげてもいいのよ?」 「じょ、じょうちゃん…それはちょっと…」 「いやっ…いいです…もう……」 ……こ こりゃぁ、とりあえず無難な質問をしなければ… 「で、何?」 「いやな、さっきから言ってる"うねめ"ってうまいのかって……」 よしッ!我ながらイイ質問だ! これならリナだって……って…アレ?リナなんか怒ってるう? 「ガ・ウ・リ・イ(はあと) かくごはできてるわねぇぇ!!」 どがぐしゃぁぁぁぁ(肉がつぶれる音) ぶしゃぁぁぁぁぁぁ(血が吹き出す音) …な……なんで………? あとがき どもっあいりです! いかがだったでしょうか?「お祭りの夜は…」ガウリイバージョン! なんだか最初と最後のふいんきがビミョ―に違うなー…というのは気のせいです(断言) もしどーしても気になった場合、それは三人称と一人称の 違いが生み出すふしぎなふしぎな魔力とでもおもっといてください。 それでは… |