すりーぴんぐ びゅーてぃ
Gourry side


















いつまでも続くわけなどない。
たとえそれが良いことでも悪いことでも。
そんなことは最初から知っているさ。


リナが狸寝入りしていたとしてもすぐに見て取れた。
理由を自分なりにを探ろうと思っているらしい。

これは秘密の事だから。
リナには知られたくなかったけれど。
リナがわざわざ睡眠時間削って待っててくれるなら、ほんの少しオレの手管を暴かせてやってもいいかもしれない。


「リナ…」

名を呼ぶその声にありったけの想いを込める。

「リナ」

出来ることなら、この眠り姫を永遠に茨の城に閉じ込めておきたい。
リナが眠り姫とすればオレは王子などではなく、魔法使いだ。
嫉妬と独占欲に囚われた浅ましい男。
世界でリナとオレだけになってしまえばいい…。


「リナ」

抱き寄せて、その身を包む。
わずかに上気した顔。
怒っているというより、恥ずかしいのだろう。
リナが必死に平静を保とうしているのが手に取るように解る。


こんな野宿をする日だけは、オレの望みが叶うような気がする。
オレのためにある闇夜と、頼りない焚き火の揺らめき。


始めは、本当にただのお守りだったはずが。
リナに惹かれ、守り守られ、やがて当然のように愛した。

だから、こんな日はオレが狂いそうになる。
抱き潰して、獣のように求めそうになる。

いつもは抱き締めて、ただ髪を梳いたり頬に触れるだけ。
ただ、寝心地悪そうに寝返りを打つ体を少しでも労るだけ。
けれど、今日は違う。


愛おしむように髪や頬、唇を撫でる。
耳たぶにそっと触れれば、感じるのかリナはぴくんと反応した。
一つ、弱点を見つけてやった。
新しい発見に手を止め、くつくつとのどを鳴らす。
まだ蕾の花をなぞるように、柔らかく刺激していく。

ついには唇で愛で……
初めて少女の柔らかい唇に触れる。
極上の感触と甘み。

それでもただ触れるだけにセーブしながらじっくりと味わう。


眠っているリナにはこんなことしても無駄だけれど…

唇を放して凝視すれば、リナは僅かに息を乱し、鼓動が恐ろしく加速していた。

くす……
思わず笑みがこぼれる。

顔が夜目にも解るくらいはっきりと紅潮している。
リナ。
本当にお前さんは鈍いな。
だからこんな悪戯をしてもいいだろう?

そろそろ、本気で落としたくなったんだ。
















いつの間にか眠ってしまったリナに、もう一度口づける。
オレのキスは眠りの魔法。
リナ、良い夢を。

そっと抱き直し、リナの重みを感じながら、彼女の柔らかな髪を飽くことなく梳き続けた。








夜と朝が交差する瞬間、
この世界で一番深い闇が訪れる。
オレはリナを起こして短い言葉を交わすとすぐに目を閉じる。

この闇は、オレ自身の中にある闇と同じ昏さ。
リナを全てから奪い去って囲いたいと願っている。
貪欲な、深い深い闇(アイ)。


彼女は不満げにまだぶちぶちと何かを言っていたようだが、何食わぬ顔で狸寝入り。
ああ、オレはホントお前さんには弱いな。
今更リナと向き合うのが怖いなんて。
知ってるか?
お前だけがオレをこんな風に情けなくするんだ。
なぁ、リナにはちゃんと届いてるか?


それに答えるかのように、
ふわり、と微かに甘い香り。
他の誰でもない、彼女からの口づけ。


その行為に魂が震え、歓喜する。
自惚れて良いか?
愛し続けてもいいか?


「秘密主義のガウリイなんか大嫌い」

そんなこと言うなよ。
オレはこんなに愛しているのに。


「だから、今度は起きてるときに言ってよね」


……くすくすくすく。

ああ、そうするよ。
飽きるほど言ってやるさ。

だから、愛しい愛しい眠り姫。


どうか起きても王子様ではなくオレを選んでくれよな?








END