Way Out |
―――――もしも俺と同じになったらどうだ? 聞かないで―――――。 ―――――もしも自分の連れが――――― 「ふう。今日はガウリイに気づかれないですんだっかな♪」 人気のない町外れの森の中。 あたしは一人ブーツの音を殺して歩いていた。―――――夜に。 そうっ、言わずと知れた盗賊い・ぢ・めv ここのところごたごたしていてできなかったもののストレスは たまるし旅の資金もだいぶ減ってきた。 そこで、ちょっと宿からは離れた、ほとんど隣街な場所にある と噂されている盗賊のアジトに行くことにしたのである。 宿に帰るのがちょっとおっくうだけど・・・・・。 かなり歩いて、街から離れると噂の方向に明かりが見えた。 あたしは気配を殺し、草の茂みに身を隠して様子をうかがう。 アジトがあり、盗賊がたき火を囲んで話している。 おーし楽勝っ。 まずはウォーミングアップに簡単な呪文でっ・・・と。 呪文を唱えるあたし。そこで盗賊の声が不意に聞こえた。 「そーいや聞いたか?セレンティア・シティの方で神官たちの 殺しあいだとよ」 どくん。 思わず、呪文を唱えるのを止めてしまう。 「ああ?俺はあのロバーズキラーのリナ=インバースが関わっ たって話を聞いたぜ。なんでも神官を殺した奴が仲間だったとか」 おかしそうに言う奴らに腹が立った。 同時に。 思い出してしまう。 どうしても考えても考えても答なんて出てしまっているのに。 それでも必死に解こうとしている言葉。 ―――――もしも自分の連れが、どこかの馬鹿にぶち殺されたら―――――。 ―――――わかりきっている。 あたしは、とっくに答を出してしまっている。・・・・・・冥王との闘いの時に。 世界よりガウリイを選んだ―――――。 ルークが今どうしているのかはわからない。 でも。 もしあれがあたしだったら―――――? 「火炎球っ!」 あたしの放った攻撃呪文の一撃に、五、六人がまとめてすっ飛んだ! 「爆裂陣っ!」 あたしを正体不明の生命体呼ばわりまでした罪により怒り二波。 そして全身黒ずくめの魔道士があたしの前に現れる。 レッサーデーモン一匹を呼びだし、あたしは思わず笑い転げる。 「・・・・・あんだけおーげさな魔法陣と仰々しい呪文使って ・・・・・・呼び出したのがレッサーデーモンたった一匹・・ ・・!?う・・・・・うぷぷぷぷっ!」 あたしにとって全然脅威でもなんでもない敵。だから笑えて。 すぐ倒して、この魔道士も倒してお宝げっとしてさっさと宿へvと思いつつ。 ミリーナがザコにやられたこと―――――。 そして。 どこかで。 このまま盗賊たちを倒したあとそのままの足で宿に戻らなけれ ば―――――という思いが交差した。 あたしらしくもない、迷い。 そんなとき。 世界が。 震えた。 そして魔道士が召還したレッサー・デーモンに羽が生え、呼び 出した術者自らを光の槍で貫く。 何―――――? ザコなはずのレッサー・デーモンの突然の変化。 何が起こるかなんてわからない―――――。 レッサーデーモンがまた光の槍を放つ。 少し外れた横の方―――――。 すご腕の剣士が、そこにはいた。 光の槍を切り払い、俊敏にレッサーデーモンも切る。 ―――――ガウリイ。 逃げるか考える前にみつかってしまった――――――――――。 そのことに。 ほっとしていたり。 ・・・・・・・・・・息苦しかったり。 「―――――こら、リナ」 あたしの内心には気づかず、普段の優しい声。 「また夜中に抜け出して盗賊いぢめを・・・・・」 「説教はあとよ」 ごまかし。 悟られることがないように。 ―――――言わないで。 悟らないで。 「さ、帰るか」 しばらく経って。 ガウリイがあたしに手を差し伸べた。 帰る。 当たり前のように。 この男は―――――言う。 「・・・・ん」 あたしは曖昧な返事をする。 「お前さんも根性あるよなあ。わざわざこんな宿の遠くに盗賊 いぢめに来なくてもいいだろうに」 ―――――――――― 「ん?どーした?」 「・・・何でもない。だってここまで来ないといいお宝もって そうな盗賊いなかったし」 ―――――考えない。 考えても仕方ない。 そう自分に言い聞かせる。 そうしてこの男と、一緒にいる。 ―――――重いものが大地に落ちる、嫌な音。 ―――――あたし達は魔王と再会し。 二人で、未来を運などにまかせないために―――――戦った。 「ガウリイっ!ガウリイっ!」 嫌。 逝かないで。 考えたくないのよ―――――。 「死んではいないが―――軽い傷でもない。 すぐに我を倒し、もとの世界に戻って治療を施せば助かるだろう。 だが、そうでなければ―――わかるな?」 ―――――すなわち―――――死――――― 思った瞬間。 肺が縮んだ。 ああ。 そうか。 考えたくないなら。 答えは一つだ。 簡単なこと――――――――――。 その時―――――迷いが氷解した。 ―――――そんなことはさせない―――――絶対。 「なら、行くわよっ!」 あたしは―――――魔王に向かった。 |