なんでもない日常生活 |
普通に生活してると、周りにはいろんなものがあるじゃない? 例えば、コップやアクセサリーみたいな小物とか。 あたしのアイツへの認識もそんなもんだった。 アイツがあたしの前から消えるまでは…… 「ガウリイ?どこ?」 いくら周りを見渡してもガウリイの姿も見えなければ返事もない。 「もう、いったいどこに行っちゃったのかしら……」 ここは『迷いの森』と呼ばれている森の中。 その名の通り、迷えば出ることはほぼ不可能といわれている。 別に道が無いわけじゃなく、ちゃんとした道さえ通っていれば迷うことなく出られるのだ。 なのにガウリイときたら…… 『リナ』 『わかってる。2,3匹ってとこかしら』 『油断するんじゃないぞ』 『ガウリイこそ。いくわよ!』 いきなり茂みの奥に現れたレッサー・デーモンの気配に気付いたあたしとガウリイは、戦闘の準備をする。 ガウリイは剣を抜き放ち、あたしは呪文を唱える。 ――ぐるおおぉぉぉぉ……… 『ゼラス・ブリッド!』 『はあぁっ!』 あたしの呪文一発と、ガウリイの一撃で、あっさりと終わった。 『あ〜あ、要らない時間くっちゃった。さっさとこの森抜けるわよ』 『ああ、わかっ……うおっ!』 『?ガウリイ?どうしたの……って、ガウリイ?』 返事が途中で途切れたのを不審に思い、後ろを振り返ってみると、そこにガウリイは居なかった。 急いで辺りを探してみる。 すると、いかにも滑りやすそうなじめじめとした草に、あからさまに誰かが滑ったような後があった。 ……ガウリイの奴……滑ったわね…… ということで、ガウリイを捜しているのだ。 だが、捜せど捜せどいっこうに見つからない。 こうなるとあたしも心配になってくる。 「ガウリイー!どこー!」 呼んでも返事が返ってこない。 不安で胸が押しつぶされそうになる。 「ガウリイ……どこよぉ……」 自然と声が小さくなり、涙が込み上げてくる。 その場にへたり、と座り込む。 …あたしって、こんなに弱かったっけ……? 「おーい!リナぁ!」 声のした方に顔を向けると、そこには…ガウリイがいた。 ちょっと泥がついてるけど、いつもと同じ長い金髪。 いつももほほんとしているきれいな蒼い瞳。 その大きな手をぶんぶんと振って。 「いや〜、悪い悪い。ちょっと足を滑らして……って、うおっ!り、リナ!?なんでお前泣いてんだ!?どっかケガしたのか!?」 なんか今、すっごい安心した。 なんでだろ…ガウリイが戻ってきただけなのに…… 「あんたのせいよ…バカ……」 「え?お、俺のせい?」 おたおたしてるガウリイを見ながら、涙を拭う。 「ま、いいわ。さっさと森を抜けましょ。」 「ああ。でも帰り道わかんのか?ここって『迷いの森』ってんだろ?」 「おお!ガウリイが珍しくものを覚えてた!」 「リナぁ〜」 「とにかく、そのへんは大丈夫よ。来る途中にこれ落としてきたから」 手の中の木の実を見せる。 「ふーん。じゃ、さっさと行こうぜ!」 「おっけー!あ、街に着いたら食事はあんたのおごりね♪」 「な、なんでだよ!?」 「あたしにさんざん心配かけたでしょ!さ、行くわよ!」 「ったく。しゃーねーか。おーい!待ってくれー!」 普通の生活してて、周りにいっぱいものはあるじゃない? でも、今まであったものが急に無くなったりしたら…… 寂しい、と思う…… だからガウリイ! 急にいなくなったりしないでよね! |