ある夜の出来事























―気がついたら、あたしはベッドの中にいた―


そういえば、旅の途中で倒れたんだっけ・・・
頭がぐらぐらして気持ち悪い。起きあがろうとするが、力がでない。
それでも頑張って、少しだけ体を起こした。

どうやら夜のようである。カーテンの隙間からは月の光が差し込んでいた。

ふと、左手に何かが触れたような気がして目をやる。
・・・毛糸?いや、これは・・・もしかして・・・
暗くてよく見えないが、金か黄かのそれを掴んで引っ張ってみた。
「やっぱり。」
思った通り。その正体は、ベッドに背をもたせ、座って寝ているガウリイの髪の毛だった。
「も〜〜。ちゃんと自分の部屋で寝なさいよね・・・」
あたしはベッドから降り、少しよろよろしながらガウリイの前にちょこんと座った。
・・・綺麗な顔・・・こうやって見ると結構かっこいいのね。
普段は剣術バカの脳みそクラゲなのに(笑)
あ、よだれ垂れてる。汚いわねぇ。
あ、そうだ!毛布かけてやんなきゃ!この前お腹冷やして腹痛起こしたもんね。ほんとバカよあんたは。

あたしはベッドの毛布を取ろうと手を伸ばし・・・

グイッ

「わきゃぁ!?」

あたしはガウリイの腕に腰をとられ、そのまま抱き寄せられてしまった。

ぎゅっ

「ガ、ガウリイ!?」

あたしは慌てて身を引こうとするが、ガウリイの力が強すぎてびくともしない。

「リナァ〜・・・・ムニャムニャ・・・・」

こいつ、寝ぼけとる・・・(汗)しかもあたしの夢みてんの!?
顔が赤くなるのが自分でもはっきりと分かる。このエロクラゲ!!!


・・・・・でも・・・・・ガウリイ・・・・・あったかい・・・・・・
なんか・・・落ち着くなぁ・・・・。


はっ!いけない!あたしったら何いきなり少女漫画モードに入ってるのかしら(焦)
と、とにかくここから脱出しなくちゃ!
じたばたしてみるが、やっぱり体は固定されたまま。
・・・これ以上暴れても体力の無駄ね。
熱っぽいせいもあって力もあんまでない。

仕方なく、あたしはガウリイの腕の中、おとなしくしていることにした。



―ふと、あのときの事を思い出した。―


『世界よりもガウリイを選ぶ』


ガウリイがさらわれて、はじめて気づいた自分の気持ち。
ただガウリイを助けたい一心で、あたしはギガ・スレイブを発動させた。
暴走させまくったあげくに、終いには金色の魔王ロード・オブ・ナイトメアに身体を
乗っ取られちゃったけど、あんたが私を助けてくれたんだよね・・・
あんたがいなくなっちゃったとき、あたし、いつもあんたの事考えてたんだよ。
あたしのせいで犠牲にさせてごめんねって・・・早く助けたい、早くガウリイに逢いたいって・・・またいつものように、朝起きて、1階に降りたらガウリイが笑顔で「おはよう」って言ってくれて、ご飯の奪い合いしたりして・・・

あのね、ガウリイ・・・・・あたし・・・・・・あんたのこと・・・・・・・

「愛してる」

・・・・・・・・・え?

今、あたしが言ったんじゃない。

ふと顔を上げると、ガウリイが優しい瞳であたしを見下ろしていた。いつもの、穏やかな表情で・・・

「ガウリイ!?あんたいつから起きてたの!?」
「お前を抱きしめたときから」
「なっ・・・」

驚きのあまり声が出ない。

「愛してるよ、リナ」

ドキンっ

なななななななななな何で急にこんな事態に!!??

あたしはたまらずうつむいた。
真っ赤な顔を見られたくない一心で。
しかも愛してるって!?ガウリイが・・・あたしのこと・・・ほんとに!!?

心臓がバクバク言ってる

「リナ、顔上げて」

あたしは恐る恐る顔を上げた。妙に男らしいガウリイの顔が見えたその瞬間・・・

「んっ!?」

ガウリイがキスしてきた!

あたしはもがきまくって抵抗する。

「ぷはっ!ち、ちょっとガウリイ!あんたいきなり何す・・・んんんーーーー!!?」

ガウリイはあたしの抗議をキスで中断させる。

力・・・入らなくなっちゃう・・・・

あたしがおとなしくなったのを見計らって、ガウリイは唇を離し、今度はあたしの首筋にキスをしてきた。

「ガウリイどうしたのよ!?ち、ちょっと!!やだっっ・・・・あっ・・・」

や、やばい!このままじゃぁ――

「リナ・・・」
「ガ、ガウリイ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

し〜ん



「・・・・・・・え?」



し〜〜〜ん



「ぐお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「・・・・・は?」
「んん〜〜リナァ〜〜、そんなにくっつくなよぉvv・・・ムニャムニャ・・・」

こ、こひつわ・・・・(怒)

「夢と現実を混合するなーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


スパコンバッチーン!!!!


一瞬ガウリイの腕の力が弱まったのを見計らって放ったあたしの必殺スリッパビンタは、ガウリイの綺麗なお顔に綺麗に痕が残るぐらい、これまた綺麗に命中したのだった。


――ったく、やっぱり好きになるのやめようかな!このエロバカクラゲヨーグルト頭!!!!!――







〜end〜