月が見える丘、兎の雫














寒い夜だった。
仕事帰りの俺は、いつもの近道を通って家へと急いでいた。
町はずれにある俺の家。
普通に道を歩いて帰ると1時間かかるが、真っ直ぐ森と原っぱを突っ切れば三十分は
短縮できる。
今日も俺はいつものその道を歩いていたんだ。

浅くつもった雪。

森は木々が雪を阻むから歩きやすい。
でも原っぱは一面真っ白になっていた。
誰も踏み込んではいない真っ白な世界。

何故だろう?
人間いくつになっても、こんな景色をみるとウキウキする。
まっさらな雪の上にむやみに足跡を付けたくなるから不思議だ。


「ん?」


原っぱにあるこんもりとした丘。
一番上にひょろりと高い木が生えている。
冬に花をつける変わった木だ。
真っ赤で大きな花と、堅い青々とした葉。
雪の中の真っ白な世界で、そこだけ浮いていた・・・

そして、そこにはもう一つの紅があった。


「・・・・・・・・」


その人物は、細い木に寄りかかるようにして空を見上げていた。
大きな瞳は紅い。
髪は波打つ栗色・・・白い肌、細くて折れてしまいそうな手足。
いつからそこにいるのだろうか?
丘の周りはおろか、原っぱには俺の足跡しか無い。


「・・・おい」
「ねぇ?」


声をかけると同時に向こうが俺を見て口を開いた。
降り積もる雪の音のような涼やかな声だった。


「・・・寒くないのか?」
「月」
「え?」


俺の質問は全く無視で、その少女は言った。
彼女が見つめるのは、夜空に丸い穴を開けたかのような大きな月。


「あぁ・・・満月だな?」
「そう、満月・・・綺麗でしょ?」


クスクス彼女は笑う。
嬉しそうに、幸せそうに。

ふと、そのとき俺は気づいた。
いままで、彼女の瞳とその髪と、傍の花に気を取られていたが・・・
真っ白な雪を染める鮮やかな朱がもう一つあることに。


「お前・・・怪我」
「・・・満月の日は、魔力が増す」
「おぃ、何言ってるんだ?それより早く手当を!」


全く俺の話を聞こうとしない少女。
俺は少女に近寄り、自分のコートを掛けるとポケットからハンカチを取り出し血を流
す足を縛る。


「深い傷じゃないが、ちゃんと消毒しないとな・・・」


そう呟いて顔を上げると、まだ彼女は月を見ていた。


「あたしね、満月の夜にはいつもここに来るの。」
「あ?」
「強い魔力を月が持つ日は願いが叶うから。」
「・・・・?」
「ずっと、ずぅーっと願ってた。」


愛しそうに月を愛で、少女は俺を見た。
紅い瞳が細められる。


「独りにしないで・・・」
「え?あ、えぇ!?」


抱きついてきた小さな温もりは・・・震えていた。
何がなんなのか解らないが、何となく独りにしたらこの少女は死んでしまうのでは?
と思った。


「・・・独りにしない」
「嬉しい」


口から出た言葉。
でもソレは今まで言ったどの言葉よりも・・・俺の心から自然と飛び出した。







不思議な月の夜・・・俺は兎のような少女を拾った。


「名前は?」


独りになると


「俺はガウリイ」


寂しくて


「あたしは・・・」


寂しくて


「リナ」


死んでしまうかも知れない


「よろしく、リナ」


兎の心を持った、可愛い少女を。










―――丘より見える月、輝く光は雫となりて、少女の願い叶えたもう。

小さく震える、幼き兎を温もりへと導く純白の輝きをもって―――


















END


あとがき

さてこれは、『月の雫』をイメージして書いてみましたのv
内容がつかめないふわっと不思議なお話です(笑)
一体どうしてこんな展開なのかは解りません(爆)

では、15万HITおめでとうございます♪