イイオトコ










ねちゃねちゃした何かが、あたしの中にいて、時折あたしの意思と関係なく、外の世界に出ようとする。
それは非常に気持ちの悪い、好ましくないものだとわかっている。
でも間違いなく、それもあたしの一部なんだと最近気がつき、また認められるようになってきた。

あたしの保護者を見る、女の眼つき。
憧れ、羨望、そして恋慕。
あたしの保護者をそんな眼で見ないで。
彼はあたしの保護者なんだから。
彼は彼自身で望んであたしの傍にいるんだから。
そういう視線を投げかけないで。
あたしの気持ちが同じだと、気が付いてしまうから。

イイオトコ。
あたしはそんなものにお目にかかったことはなかった。
初対面であたしの事をチビガキ扱いするような男、ただの失礼なお節介焼きにしか見えなかった。
それは多分、彼にとってあたしが女でなかったから。何よりあたし自身が、女になっていなかったから。

今、あたしの横を歩いている自称あたしの保護者は、初めて出会った「イイオトコ」だろう。
金髪碧眼。眉目秀麗。無駄の無い引き締まった体躯を持ち、剣の腕は他に類を見ないほど。そしてなにより、あの包容力。
女に困った事などないんだろう。なにせ女が放っておかないだろうから。
彼の隣を歩くようになって、初めてあたしは自分を子どもだと思った。
あたしには、彼を見つめる女達の、あんな熱い瞳をする事が出来ない。
誰かをあんな瞳で見つめる事が出来ない。
・・・あんな艶のある瞳など、未だ持ち合わせていないのだ。
女に対して嫌悪感を持ったのも、初めてだった。

欲情。
浅ましく、恥ずかしいもの。包み隠すべきもの。それを表に出すのは、はしたない事だと思っていた。

「ガウリイ、抱いて?」
滑り落ちた言葉は、もう拾う事は出来ない。
ガウリイが男性であること、男であること、雄であること。
それに気付いた時にあたしの心をいっぱいにした、糸を引きそうなぐらい粘ついたナニカ。
あたし以外の女に触れたことのあるであろう彼が、たまらなく恨めしかった。
見たことの無い、彼に触れられた女が、本当に憎かった。

彼への気持ちに気付き、あたしは女になる。
あたしに触れて。
貴方の中を、あたしだけにして。
あたし以外の全てを忘れて。

あたしに伸びてきた彼の腕を、あたしは両手で受け止めて、あたしの頬へと導いた。
彼の大きな手のひらに頬擦りすると、彼が見たことの無い笑顔を見せた。

「それが、お前の本心なんだな?」

彼はそう確認すると、自らが腰掛けていたベッドに、あたしを導く。
当然抗う理由は無い。
あたしは彼の隣へ腰掛けた。

彼はあたしの方を抱き、斜めに屈み込む。
初めて、彼はあたしの唇に、彼自身のそれで触れた。
あたしの心は跳ねた。この世にある幸せな刺激。
この刺激を与えてくれる人は、生涯この人だけでありますように。

口付けたまま、あたしはゆっくりと倒されてゆく。
柔らかいクッションがあたしを支える。
温かな彼の唇が離れ、
「もう、止めないからな?」
と、あたしに最後のチャンスをくれる。

彼の優しさ。彼の気持ち。
そんなあんただから、あたしはこんなになってしまった。
彼の気持ちはわかっていた。多分。分かてないと言ったら嘘になるから、きっと分かっていたんだと思う。
伊達に3年間も一緒にいたわけじゃない。
こんなくらげの考えてる事くらい、わからないあたしじゃないわ。
でも、不安だった。
あたしの知っている男と言うものは、もっと即物的で、がっついたものだったから。
あたしを大事に扱ってくれる彼が、女としてあたしを見てくれているのか。
見る事が出来るのか。

「リナ?」
ちょっと弱気な声を出したガウリイに、
「・・・怖い・・・」
って、言ってみる。
ガウリイがやっぱりという顔をしたから、
「嘘」
と、笑ってやる。
この人はあたしの理解が足りないなあ。
腹を決めたリナ=インバースの決意はそうそう変わらないわよ。

あたしは、彼に腕を回す。
彼の体の逞しさに、改めて気がつく。
「・・・全く、嘘じゃあないの・・・」
本音が、零れた。ちょっと俯いたら、彼を見れなくなってしまった。
頑張れあたし!
暫く彼は無言でいた。
あたしを待ってくれていた。いつものように。
「でも、ガウリイに、触れて欲しい・・・」

「よく言えました、リナ。うれしいぞ」
ガウリイの本当に嬉しそうな声で、あたしは顔をあげた。
本当にすごい笑顔・・・。
いつもの彼。
ああ、あたし、この笑顔が好きなんだなあ・・・。
あたしを見る、この優しさの溢れる笑顔。
なんであたし、この人を怖いって思ったんだろう?

温かい口付けが繰り返される。
どうしよう。幸せだわ、あたし。

と、幸せに浸れたのは此処まで。
ガウリイが強いのは、剣だけではないことを、あたしはこれから身をもって、思い知らされるだった×××


コメントです:
 初めまして、明(とおる)と申します。今回、がうりな初めて書きました。もう題名とは全く内容関係ないし、誰なんだこれは?!て感じで、大変申し訳ないです。御目汚し、この上ない!!邪な明に全ての責任があります・・・。すみません・・・。
にしても、ガウリイみたいなイイオトコ、どっかに落ちてないでしょうか?
・・・落ちてたら、争奪戦で血をみちゃいますね・笑。