L e t t e r








『前略 リナ=インバース様。
・・・って、自分にこんな書き出しも何か変だよね。』


「リナ=インバース様ですか?」
「はい?」
そういって渡された手紙の差出人は・・・私だった。

今日は私の20回目の誕生日。
もぉ充分大人になったんだから、今日こそはガウリィに『保護者解任』
(笑)を言い渡して・・・その、ねぇ。
特別な日にしたいな〜って思っていたのよ(照)。
その矢先にこの手紙。
・・・いつの間に手紙なんか書いていたかな・・?

『二十歳の誕生日おめでとう。
きっと、いつこんな手紙書いてたか、私自身も忘れてると思うけど、
とりあえず、今の私はガウリィと旅を続けて2年が経っています。』

・・・さすが私、きちんとツッこみ入ってるわ。

『ガウリィはまだ側にいますか?
・・・きっと相変わらず『保護者』なんて言って、子供扱いされてる
んでしょうね。』

hっ・・当ってる。

『実は私、好きな人が出来ました。
彼の名前はガウリィ=ガブリエフ・・・私の自称保護者です。
って言っても、自覚したのはつい最近なんだけどね。』

・・・あの頃。

『彼を失って、初めて彼の存在の大きさに気付きました。
例え世界を天秤に掛けても失いたく無い・・・いつのまにか、そんな
感情を抱く様になっている自分に、正直戸惑っています。
でも、同時になんだかとっても嬉しいです。
お姉ちゃんの『世界を見てこい!』って言葉で、私は世界に匹敵する
存在に出会えたから。
・・・・私はあいつが好き。』

hh・・・恥ずかしいなぁ。さすが若気の至りってやつよね。

『・・・今、顔真っ赤でしょ?
私だって恥ずかしいわよ、こんな事書いてる自分が。
でも、これぐらいストレートに書いておかないと、きっと私には解らない
かなぁって思ったから。
ひねくれてて、素直じゃなくて、我侭な私には・・ね?』

・・・おひ?

『これから彼と過ごす3年間は、きっと色々と大変な事があると思うけど。
彼の幸せを考えて、離れてしまっているかも知れないけど。
でも、もし今も彼が側にいて、そんな私の支えになってくれているのなら、
・・・離さないでいてね?』

・・・・・当ったり前じゃないのよ。

『でもなぁ、あいつってばきっとこんな乙女の純情なんか理解できないと
思うし、(何てったってクラゲだしねぇ)いっその事、私からモーション
かけないと通じないかもよ?
二十歳になったんだから、思いっきり積極的に迫っちゃえば、クラゲの
あいつにも通じるかもよ(笑)。
『大人になった私を見て〜!』・・なんちゃって。』

ちょっ・・それはいきなりすぎるんぢゃないっすかぁ?

『私に言われるまでもなかったかな、ひょっとして?』

うみゅうううう。

『最後に。
二十歳の誕生日、本当におめでとう。
これからの人生を、どうか悔いの残らないモノにして下さい。
この先もずっと・・・彼の側に居られる私でいて下さい。
常に前だけを見つめて生きていって下さい。
今の私の、正直な気持ちです。

貴女の誕生日が、掛替えのない記念日になる事を祈って。

二十歳の私へ。
17歳の私より。』

・・・こりゃ、参ったなぁ。
17歳の私の方が、ずっと大人だったんだぁ。
・・・あれ、まだ続きがある。

『追伸:
この手紙だけじゃ、私のコトだからまだまだ素直になれないかな?って
思ったから、ガウリィにも手紙書いておいたからね。
・・・頑張れ、私!!』

「ぬぁあんですって〜〜〜〜〜〜?!!」

「ちょっとガウリィ・・・・あう、遅かったか・・・。」
ガウリィの部屋に行くと、手紙を握りしめてベットに突っ伏している
彼の姿が見えた。
肩が震えている・・・笑ってるな。
「い・・いよぉ、リナ。・・・くくくくくっ。」
「・・・手紙、読んだわね。」
「あぁ・・ぷぷっ、読んでみるか?」

そこには簡潔に。
『ガウリィへ。
今もあんたの側に私が居るなら、私はきっちりしっかりあんたに惚れてるから、
だからさっさとモノにしちゃいなさいね。』

あ・・・あからさますぎるぅううううううう!!!

「参るよなぁ。こんなストレートな手紙は初めて貰ったぜ・・・くくっ。」
「ああああああ、あんた、何がおかしいってのよ?」
「べっつに〜。」

「もぉいい!好きなだけ笑ってなさい!!」
「まぁ待てって。」
いつの間にか立ち上がっていたガウリィに腕を捕まれ、そのまま彼の胸に
引き寄せられる。
「・・・誕生日おめでとう、リナ。」

そう言って、ポケットから何かを取り出したガウリィが、私の左手を大事
そうに掲げて・・・薬指に指輪をはめた。

「え・・・・・ええええええええ??」
「もうリナに保護者なんて必要無いだろ。・・・今度は配偶者として側に
いてくれないか?」
配偶者って・・・ガウリィ、あんた。
「返事は?」
「・・・あう。」

ゆっくりと近付いてくる、蒼い瞳。

初めてのキスは、ほんのり熱くてすっごく甘い感じがした。

「〜〜〜〜〜っ!!」
「・・・何なのよ?」
「いや〜、俺って辛抱強かったなぁって思ってさ。」
「バカじゃないの?」
「でも、これからは大っぴらにできるしなぁ。・・さてと。」
言うが早いか、ガウリィは私を抱きかかえてベットに向かっていく。
「ちょちょ・・・・ちょっと、ガウリィ?」
「さっさとモノにしちゃおう!」
「〜〜〜〜!!このバカ!クラゲ!離しなさいってば、こら!!」
「だ〜め。」
「やん、どこ触って・・・・・ふにゅううううう?」


手紙を書こう。
今度は3年後の私へ。
今の私の正直な気持ちを。

『前略 リナ=インバース様。
   私は今、とっても幸せです。
   ・・・・愛しい人が出来ました。』
  

<終わり>