ヒ ト ミ










待って、行かないでガウリイ、ガウリイ!


『ゴメン。』


いや、どうしてそんなこと言うの!?


彼が飲み込まれていく、暗い闇に。
長い金の髪も、青い瞳も暗く霞んだ虚無に還っていく。


ガウリイ!
ガウリイ!ガウリイ!
ダメだよ・・・行かないで、傍にいて、あたしガウリイがいないと・・・


『傍にいられなくてごめんな。』


謝らないでよ、・・・ガウリイ?
ガウリイ!?



暗い闇の霧は容赦なく彼を消した・・・。









どうして、どうして、ガウリイは消えてしまったの・・・



立った一人闇に取り残された。
そんな場所に気配が一つ現れる。



ガウリイ!?



しかし、それはガウリイではなくて。


『久しぶりですね、リナ=インバース。』


・・・レゾ?



そこにいたのは、かつて自分の瞳を開かせるためにあたし達を利用し、
自身の中の魔王を目覚めさせてしまった男がいた。

目に鮮やかな真っ赤な法衣は今は色あせて見える。



『どうして、私がここにいるか、知りたいですか?』


・・・何故?


『ここにいるのは、私だけではありません。』


彼がそう言うと、もう二つの光が人の形に変化した。


『よぅ、元気にしてたか、お嬢ちゃん?』
『わしらは・・・まぁ、見ての通りだ。』


ゾルフに・・・ロディマス・・・?
どうしてこんな所に?


そこに現れたのは、ゼルガディスの元部下の二人だった。


・・・どうして、こんな所にあんた達が・・・!

ガウリイ・・・ガウリイのこと!?
何か知ってるの、知ってたら教えて!
どうしたらガウリイを取り戻せるの!?


『それは私たちがお教えするわけにはいきません。』


そう言うと、三人の姿が薄れていった。


待って、お願い教えて、あたしはどうしたらいいの・・?


『アンタは、自称天才美少女魔道士なんだろ?』
『自分で考えるんだ、なぜわしらが現れたかを・・・』


待って!


『ゼルガディス殿によろしくと、伝えてくれ・・・』


そう言い残して三人は消えた。








何・・・何のために三人は・・・?
分からない、どうしたらいいの?
あたしは何をしたらガウリイを取り戻せるの?


『いいざまだね、リナ=インバース。』


え?


顔を上げたあたしの眼に飛び込んできたのは・・・ヘルマスター・フィブリゾだっ
た。

暗い闇に浮いている。
子供の姿はそのままに、あたしに話しかけてくる。


『そんなに警戒しなくていいよ。
ボクはもう君を殺したりしないから・・・それより君に、ヒントをあげに来たん
だ。』


・・・ヒント?


『そうだよ、どうしたらガウリイ=ガブリエフを取り戻せるか?』


ガウリイ!?
何か知ってるの、アンタは何か知っているの?


『知ってるよ。
でも、それは君が考えるべき事だから、ボクのヒントはここまで。』


まって、まだ何も分からない・・・わからないよ!


『ヒントは十分与えたよ。
考えるんだね、ボクがここに現れた意味を、そして、さっきの三人が現れた意味を。
二つの意味は必ず何処かでつながっている・・・
あぁ、少しヒントを与えすぎたかなぁ・・・だめだね、
ボクもいつの間にか考え方が誰かさんの部下に似て来ちゃったよ。
じゃぁね、リナ=インバース。』


そう言って、フィブリゾは消えた。
残されたあたしは考えた、二つの意味・・・彼らが来た意味、ヒント・・・。


!・・・まさか




『ようやく気づいたのかよ、リナ=インバース?』


ルーク!


『お久しぶりです、リナさん。』


ミリーナ!


涙が溢れそうになった。
あたしのせいで、あたしと関わらなければ死ななかったかもしれない二人がそこにい
た。


ねぇ、これはあたしへの罰なの?
あたしを苦しめるためにガウリイを消したの?


『おい!てめ、クソおもしろくもないこと考えてんじゃねぇぞ!』
『そうですよ、リナさん』


生きていたころと同じように、あたしを見る二人。


あたしのことを恨んでいないの・・・?


『はぁ!?てめぇを恨んでいるか?
そんなの、恨んでるに決まってるだろ、俺とミリーナのラブラブを邪魔するお子さま
のお前はな!』
『ラブラブなんかじゃありません!』
『みりーなぁ〜〜〜〜(泣)』


泣きつくルークと、無視するミリーナ。
本当に懐かしい光景だった。


『リナさん。』


・・・なに?


『ありがとう。』
『・・・さんきゅう』


彼らは同時にあたしに言った。


ど・・・して?
なんで、御礼なんて言うの・・・あたしは二人に何もしていない!


『いいえ、リナさんは私たちを救ってくれた。
不器用な私を少しだけ素直にしてくれた。
狂ってしまったこの人の望みを聞いてくれた。』
『・・・俺のエゴで、あんたらにあんな思いさせちまって、ホントにすまなかったな
・・・』


なんで・・・謝るのよ・・・あたしは、あたし・・・くっぅ。


『泣かないで、リナさん』
『そうだぜ、お前みたいなクソチビに涙なって似合わねぇ。
お前は笑ってりゃいいんだよ!』
『くす・・・素直じゃないわねルーク・・・』
『・・・』


・・・・・・


『さぁ、リナさん、もう分かっているでしょう?
目を覚まして、これは夢よ。』


ゆ、め・・・?


『そうだ、夢だ、でも俺達は本物だぜ。
わざわざお前のために出てきてやったんだ。』


何のために・・・


『今を、生きて貰うために。
いつか、貴女が使った禁呪の付けが回ってきたら?
それがガウリイさんの生死に関わる事だったら?
そのとき後悔しないように、自分に正直に・・・貴女は誰より幸せにならなくてはい
けないんですから。』


どう言うことなの・・・?


『ったく、分かんないヤツだな、要するにお前らはじれったいんだよ!
んで、俺達の変わりに幸せになりやがれってんだ!!』


それって・・・?


『ごめんなさい、こんな辛い夢を見せてしまって、でも忘れないで下さい。
リナさんに救われた人間も魔もいることを。』


ミリーナ?


『お、そろそろ行く時間か?
じゃぁな、せいぜい素直に生きるんだな。』


まって・・・待って!


『さようならリナさん。』


あたしまだ、あんた達に言ってない!





ありがとう・・・・・





『生きろよ、俺達の・・ため・・・・・に・・・・・・・・・・』












目が覚めた。
そこは真っ暗な宿屋の部屋。

目を閉じればよみがえる今まで出会った人々の『ヒトミ』が・・・。

泣いて、笑って、怒って、ふざけあったいろんな『ヒトミ』。

沢山の知り合いの死を見てきたし、名前なんて知らない人の死も見てきた。
沢山の『ヒトミ』を見て、その全てに支えられてあたしはここにいるんだ・・・。



ふと、瞼に浮かんだのは、空のように蒼い、海のように碧い彼の眼差しだった。



急に不安になる、もし、彼がいなくなったら、あたしは―――






気がついたら部屋を飛び出して、彼の部屋に来ていた。

ドアを開けて、安心した。彼はいた。
ベットに腰掛け、どうしたのか?と優しい声で尋ねてくる。





彼がここにいると言った。

嬉しくて、それでも何処か不安で・・・逃げ出しそうなあたしを彼は捕まえ抱きしめ
てくれた。



優しい腕に包まれたら・・・何もかも真っ白になって、ただ、呪文のように繰り返し
た。


―――いなくならないで・・・―――


と。











深くあたしを抱きしめ、強く求めてくれるガウリイに全てを任せあたしは・・・


彼の腕のなかで、溶けた。










あの悪夢は・・・沢山の『ヒトミ』からのメッセージ。

優しい、優しい、願いの言葉。

















―――幸せになって・・・―――

















そんな声が聞こえた気がした。

















Fin









あとがき

はい!「ヒトミ」でしたぁ〜。
ちょっぴり暗い。
しかし、これにはある続きがv
それはもぉ、甘いヤツv