風 |
ある日、ガウリイに不意に言われた言葉。 「リナって…風みたいだよなぁ。」 風は。 走って走って走って走りつづけて。 そして風は何処に行くのだろう。 誰も風について行けるほど速くは走れない。 だから誰もきっとついてはこれない。 「リナ……?」 風みたいだ、といわれたあたし。 走って走って走って走りつづけて。 そしてあたしは何処に行くのだろう。 「おい、どうして泣いてるんだ!?」 走りつづけてふと止まったとき、風に居場所はある? ついてきてくれる人はいる? あたしの周りは皆いなくなるんじゃないの? 「あたしが風なら………ガウリイも……ついてこれないのかな……」 あたしは我ながら悲しそうな声で、そう呟いた。 「リナ?」 「だって、風は速すぎて…きっと誰もついていけない。だから…ガウリイも……」 いなくなってしまう。 あたしの前から。 皆去っていって最後に残るのはただ走っていたあたしだけ…… くしゃり 「馬鹿。俺はここにいるだろ?今。ちゃんとお前の傍にいる。」 優しく頭を撫でる、大きなごつごつした手。 いつもの手。 この温かさは現実。 「俺は、風に吹かれて飛んでる種。それなら一緒に行けるだろ?それに、な…もし一 緒についていけなくなっても、お前の帰ってこれる場所になってやるよ。風に吹かれ て、帰りを待つ草になるよ。風は廻っていくもんだからまた、いつか会えるだろ?だ から大丈夫だ。」 大丈夫だ…… 彼の言葉に不思議に心が落ち着いていく。 暖かい光に包まれていく。 お日様みたいに暖かい。 「だろ?」 どうしてこの人は、あたしの不安をこんな簡単に取り除いてくれるんだろう。 不思議な人。おかしな人。 「そだね……」 「それに、帰ってくる場所がなかったら、お前さんひたすら暴れまわりそうだから なぁ、あ。今もか♪」 「ガウリイッッ言ったわね――――!!!」 「うわぁっリナ!!やめろっ冗談だっっ!!!」 あたし達はその場を駆けまわる。 ザァァァァァァァァ 風が、柔らかく吹いて、周りの草を揺らした。 「言ったんだから、絶対帰る場所になってよね……」 「え?今なんて?」 「二度も言ってやんない!じゃーね、雑草さん!」 「おいっ雑草って何だよ〜〜」 「何言ってるのよ!!あんたみたいな体力馬鹿、雑草で十分でしょ!」 「おまえなぁ………」 ガウリイは呆れたように、笑った。 お日様の笑顔で。 本当はね。 ねぇ、ガウリイ。 あんたは種って言ったけど。 あたしにとっては太陽なんだよ? ずっと見ていてくれる、暖かい光で照らしてくれる、太陽なんだよ? ねぇ、ずっと見守っててね。 すっと、照らしつづけていてね。 ねぇ、太陽さん? 〜〜〜〜〜おわり〜〜〜〜〜 |