「 帰路にて(G) 」         
                         
                          
オレとリナは、リナの郷里へと足を進ませていた。   
リナの郷里、ゼフィーリア 街の名前が、忘れちまったが
こうして のんびりと歩くのも、良いもんだよなぁ。  
                          
「もう少ししたら、ゼフィール・シティよ」      
                          
オレの横にいる旅の連れのリナが、ハシャギながら言う、
嬉しくてしかたないって様子が ありありと伺える、  
栗色の髪が 左右に揺れ、リナの上機嫌を感じ取れる様に
無意識に歩調が早くなっている・・・おいおい こんな 
所で体力を使うのは、止めてくれよ・・そっと、リナに 
見えない位置で 思わず苦笑い・・、まぁ、そんな姿も 
愛らしいんだケドな。                
                          
「そんなに急がなくても、街は、逃げんだろ?」    
                          
オレは、半分呆れつつも、そんなリナの姿をニコニコ  
しながら、見ていた。                
                          
オレが好きになったリナ、もし口実の中に含まれる事が、
叶うのなら、プロポーズをと考えているのだが・・   
どうなるのだろうか?                
                          
「そんな事 言ったって・・・・・」         
                          
リナにとっても、久しぶりの里帰り、これで浮かれない 
方が可笑しいだろうな、などと思っていると、     
言葉を紡いでいたリナの動きが、いきなり止まる。   
                          
「あっ!」                     
                          
リナの向いている方向を見るが、何も見えない・・・・ 
                          
「ガウリィ、ちょっと あたし、先に行くから!」   
                          
行くって、オレは、道なんか知らんぞぉ!       
                          
「おい、オレを置いて行くのか?!」         
                          
オレは、とっても焦った!
地理にも、乏しい場所で、投げ出されるのだけは、   
勘弁してもらいたいものだ。             
                          
「道が分かんなくなったら、歩いている人に、     
 あたしの名前を言えば、確実に教えてもらえるから」 
                          
そう言うと、リナは、オレ そちのけで、呪文の言う。 
                          
「翔風界(レイ・ウィング)!」           
                          
呪文が完成すると、リナは、空へと舞い上がって行った。
一体、リナは、何を見つけたと言うのだろうか?    
オレは、トボトボと リナの飛び去った方向へと、   
のんびり歩き出した・・・のんびりと言っても、やはり、
リナの事が気になるから、リナに合わせる時の歩調とは、
ちょっと 違う、ほんの少しだけ 早いスピードで歩く。
                          
暫くして、視力の良いオレの目に飛び込んできた    
リナの姿・・・・。                 
                          
そして、その横に居る 黒髪の男の存在、       
 その男が、いきなり リナに、リナの頬にキスをした。
 
                          
なっなっなっなっ!!!!なぁにっ〜〜〜〜〜!!!!
オレの頭の中で、昔 見掛けた事のある男であると、  
サイレンが鳴る。                  
                          
確か、あいつは、結構前に 見かけた、        
若作りの おっさんじゃないか!!          
                          
そいつが、リナのホッペに ちゅうだとぉ〜〜〜!!! 
オレでさえ、オレでさえ した事がナイのにぃ〜〜!  
                          
「あいつ、ロリコンだったのかぁ!!」        
                          
そんな絶叫と共に、オレは、走り出していた、     
目指すは、リナの元。                
                          
オレの頭の中は、今 「なっ」の文字で埋めつくされて 
いた。                       
リナが頬にキスされて、呪文で吹っ飛ばされない人間が 
いるなんて・・・・                 
ロリコンおやじめぇ〜〜〜〜!!!          
                          
あのおっさんには、色々と世話になったが、今の時点で 
おっさんの オレの中でのランクが、おっさんから、  
ロリコンおやじへと、下がっていた。         
                          
オレの走るスピードに、砂煙が上がっている様な気が  
するが、気の所為だろう。              
リナとロリコンおやじとの、距離が、一気に縮んでいく 
 視界に入るのは、リナただ一人のみ。        
                          
ふと リナが振り返った・・・・・が、オレに気付いた 
訳ではなさそうだ、視線を元に戻して、笑っている   
 いや、吹き出している。              
                          
オレは、更にスピードを上げる・・と前を歩いている  
リナとロリコンおやじの動きが止まり、2人して振り返る
                          
・・・おっさんは、リナの頭に腕を乗っけて、くつろいで
やがる。                      
リナに、なんて事をするんだぁ!!!         
リナもリナだ! 何時もの様に魔法で、そんなヤツ   
吹っ飛ばしてしまえ!!               
                          
やっと、リナ達に追い着くが、リナは、口をあんぐりと 
開けている。                    
                          
「おい、おっさん!」                
                          
怒気をはらんだオレの声、・・リナに見せた事のない姿 
リナに見られたくない一面、男としてのプライド、   
好きな女に対する独占欲 剥き出しのオレ。      
                          
「何だ、青ケツ」                  
                          
売られた喧嘩は、買うか・・上等じゃないか!!    
                          
「てめぇが、ロリコンだったとはなぁ」        
                          
思っていた事を口にする。              
                          
「ロリコンだとぉ・・・」              
                          
ロリコンじゃないか! リナは、オレと15歳の時から、
一緒に居た訳だから、おっさんが リナと知り合ったのは
それ以前の歳って事になる・・と言う事は、犯罪?   
 しかも、所帯持ちで!!!             
                          
とっ、取り敢えず、リナとの間柄ってヤツを、確かめる 
為に、オレは、おっさんに 問い掛けた。       
                          
「てめぇ、リナの何だ?」              
「保護者だ」                    
                          
言いつつ、ロリコンおやじは、腕を乗っけていたリナの 
頭に、今度は、自分の頭を乗っけた。         
                          
ロリコンおやじの言葉に、頭ん中が 白くなるオレ、  
こいつは、自分の事を保護者だと言った・・・     
一応、オレもリナの保護者だ。            
                          
おいおい、リナのヤツ 一体全体、何人の保護者が、  
いるんだぁ?!!                  
                          
「リナ、お前さん オレの他に 何人の保護者が、    
 居るんだ?」                   
「へっ?」                     
                          
オレの問いに、リナが かなり間抜けな顔をしている。 
                          
「天然は、健在か・・・」              
                          
おっさんが、前にも 言ってた様に、オレの事を『天然』
 と言っているが、そんな事より、リナが口を開くのを 
待つ。                       
                          
「3人いるわよ、一応」               
「3人、・・それが そのうちの1人か?」      
                          
リナの言葉に、おっさんが 数に入るのか尋ねてみる。
                          
「それだと・・・」                 
「ガウリィく〜ん、保護者って言うのは、普通     
 誰の事を言うのかなぁ?」             
                          
おっさんの言葉に、返事をかえす前に、リナが そんな 
事を尋ねてきた。                  
                          
「へっ? 誰だっけ?」               
「バカだ・・コイツ」                
                          
スパ〜〜〜ン!!!!               
「両親でしょうがぁ〜〜〜〜!!!!」        
                          
おっさんの呟きと共に、電光石火で、リナの懐から、  
スリッパが、オレの頭を直撃した。          
                          
「3人・・、父ちゃん, 母ちゃん, 姉ちゃん」     
「えっと、リナ 分かる様に、言ってくれ・・・・」  
                          
涙が出そうになるのを堪えて、頭を摩りつつ、     
オレは、リナの言っていた事を耳で受け流していた。  
                          
「はぁ・・」                    
                          
大きなリナの溜め息・・・・。            
                          
「リナ、先に行っちまうぞ」             
「待って、あたしも行くから」            
                          
おっさんの発言に慌てるリナ、さっさと行ってしまえば 
良いのに、なんで そんなヤツを引き止めるんだ?   
 と、いきなり おっさんが、リナの前に立ち塞がって 
オレに向かって、口を開いた。            
                          
「ガウリィ、一回しか言わんから よ〜く聞け!」   
「何だよ」                     
                          
睨みつけつつ、オレは、ぶっきらぼうに言う。     
                          
「リナは、俺の娘だ」                
                          
                          
                          
  ピュウ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ        
                          
その瞬間、オレは、固まった。            
                          
「さっ、行くぞ リナ」               
「あ、うん。父ちゃん、でも・・・・」        
「コイツなら、今は、動かんだろ」          
「ちゃんと、後で来てよね ガウリィ♪」       
                          
リナが何かを言っているが、オレは、再起不能になって 
いた。                       
                          
                          
ピュウゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ          
                          
一陣の風が、リナ達が去って行った後を 吹いていく、 
・・・リナの口から、『父ちゃん』発言が出た日には、 
 認めざる終えないのだが・・・・・・・       
なんて若作りの、おっさんなんだぁ!!!!(血涙)  
                          
オレの頭からは、ロリコンと言う言葉は、消え去っていた
 あのおっさんが、可愛いリナの父親・・・・     
そう、思うと オレの未来は、暗くなった。      
                          
                          
                     Fin