「 帰路にて(L) 」         
                         
                          
あたしと旅の連れのガウリィは、ゴタゴタな事件が、  
全て終わった後に、ガウリィから 発せられた      
 『お前の郷里なんてどうだ』発言によって、     
あたしの郷里である、ゼフィーリア王都 ゼフィール・ 
シティへと、足を進めていた。            
                          
ゼフィーリアへの 入り口である国境線を越えて、早3日
 目の前には、とっても懐かしい風景。        
                          
・・・そう、一面には、葡萄畑が広がっている、    
それを眺めつつ、あたしは、横にいるガウリィに言った。
                          
「もう少ししたら、ゼフィール・シティよ」      
                          
葡萄の葉の臭いと、これから摘みとられるであろう   
葡萄の臭いを鼻で感じ、懐かしい感覚があたしを支配する
                          
「そんなに急がなくても、街は、逃げんだろ?」    
                          
とっても、浮かれていたらしい、           
・・・自分では、気付いていなかったのに、早足になって
いたのね。                     
                          
確かに、街は、逃げないケドさぁ・・、        
久しぶりの里帰りなんだから しょうがないぢゃないの。
                          
「そんな事 言ったって・・・・・」         
                          
ガウリィに反論を唱えようと、口を開くが、それと共に 
あたしの五感に懐かしい何かが・・引っ掛かった。   
                          
全身の感覚を研ぎ澄まして・・・・・・探ってみる, と、
やっぱり、居る!!!                
                          
「あっ!」                     
                          
あたしの小さな声に、ガウリィが不思議そうな顔をする。
                          
「ガウリィ、ちょっと あたし、先に行くから!」   
                          
この懐かしい感覚、早くその存在に逢って顔を見て   
みたかった。                    
                          
「おい、オレを置いて行くのか?!」         
                          
慌てた様に ガウリィが、何か言っているが、この際  
それは、敢えて無視〜♪               
あたしは、分かりやすくキッパリと言った。      
                          
「道が分かんなくなったら、歩いている人に、     
 あたしの名前を言えば、確実に教えてもらえるから」 
                          
それだけ言い放つと、あたしは、早口で呪文を唱える。 
                          
「翔風界(レイ・ウィング)!」           
                          
あたしの体は、フワリと宙に浮き、空へと舞い上がる  
街道に沿って、一直線に飛んでいると、あたしの目に、 
飛び込んだ長い黒髪の男の人。            
あたしと同じ方向に、背中を向けて歩いているが、   
間違いない!                    
あたしは、その姿を確認すると その人の首に、呪文の 
解除もせずに飛びついた。              
                          
「ただいまぁ〜〜〜!!!」             
                          
加速がついていたのにも関わらず、あたしを見事に   
キャッチする。                   
                          
へっ? キャッチし損ねた時は、どうなるか? って、  
てへっ。 即死かな・・・首に飛びつかれた人がね。  
でも、そんな事が在りえるワケ無いって自信があったから
あたしは、そんな無茶をやったのだ。         
                          
それに、ガウリィ相手ぢゃこんな事、出来ないしさ。  
まぁ、キャッチしてくれるだろうケド、その後に    
お説教が在りそうだから、あたしは、やりたくもない  
ガウリィって、本当に 過保護なんだもん。      
(ド・キッパリ!!!)               
                          
「おっ、リナじゃねぇか」              
                          
もちろん、顔見知り♪♪               
口にくわえたタバコには、火がついていない、     
感心、感心、今でも 禁煙を続けているんだ・・・・  
                          
でも、久しぶりに帰って来たのに、もう ちょっと   
驚いてくれても良いんじゃないかなぁ。        
                          
「いきなり、帰って来たのに、驚かないの?」     
「あぁ? ・・驚くも何も、テメェの通った後の噂って 
 ヤツが、先に耳に入っちまうからなぁ」       
                          
噂って・・・一体、何?               
 と、言う事は、姉ちゃんの耳にも 入っている?!  
その事が あたしの頭をよぎった途端、あたしの血の気は
一気に引いた。                   
                          
そんなあたしを見て、軽く微笑むと、         
                          
「お帰りな、リナ」                 
                          
あたしが、この旅に出る時にもした様に、あたしの   
ホッペタに軽くキスをした。             
                          
「ただいま、父ちゃん」               
                          
久しぶりに逢った、あたしの父ちゃん・・、      
あたしは、郷里に帰って来たと言う実感を改めてした。 
                          
                          
                          
あたしは、自分の事より、父ちゃんに対して、     
質問攻めにしていた・・家族の事、身の回りで起こった 
事など。                      
                          
「ところでなぁ、リナよぉ」             
「何?」                      
                          
あたしの話を遮る様に、父ちゃんは、あたしの方を   
見据えて言った。                  
                          
「後ろの方で、すんげぇ形相しながら、砂煙 上げて  
  走ってくる パッキンのガウリィ・・、      
 アレ お前の連れか?」              
「へっ?」                     
                          
かなり間抜けな声で返事をする・・・そして、さっき  
置いて来たガウリィがいるであろう、後ろの方を、   
振り返るが、あたしの目には、何も写らない。     
それよりも、父ちゃん ガウリィの事、知ってるの?! 
                          
「俺の情報からだと、お前の回りを、ウロチョロしてる 
 物好きな男がいるって話だが・・・」        
「父ちゃん、ガウリィの事 知ってるの?」      
                          
物好きって、一体?                 
それより、あたしは、父ちゃんに 不思議そうな顔で  
問い掛けてみた。                  
                          
「湿気た面して歩いていやがったんで、ハッパ掛けて  
 やったって記憶がな」               
「湿気たって、ガウリィがぁ?」           
                          
 プッ!                      
                          
父ちゃんの発言に、あたしは、目を丸くした。     
ガウリィが、湿気た顔して歩いているなんて事、想像さえ
出来なくて、んでもって、信用性の上で 限りなく    
0(ゼロ)に等しくて、あたしは、父ちゃんには、悪いケド
思いっきり、吹き出して笑っていた。         
                          
「ちょい、ストップな リナ」            
「うみゅ?」                    
                          
あたしの笑いを制すると、父ちゃんは、今 歩いて来た 
方を振り返って・・・・・・・・・・・・・・って、  
父ちゃんの言ってた通り、砂煙が上がってるんですケドぉ
・・・そして、その中心には、ガウリィ。       
                          
父ちゃんは、あたしの頭の上に腕を乗っけて、寛いでいる
 ・・とっ、父ちゃん(汗)             
                          
一分も経たない内に、ガウリィが、あたしと父ちゃんの 
前に、父ちゃんの言ってた様に、すんごい形相で、   
立ち止まった・・が、父ちゃんとガウリィって・・・  
知り合いなんだよね?                
                          
「おい、おっさん!」                
「何だ、青ケツ」                  
「てめぇが、ロリコンだったとはなぁ」        
「ロリコンだとぉ・・・」              
                          
・・・・・・はぁ??? 父ちゃんが、ロリコン    
 に対して、ガウリィが、青ケツ・・・・・・何それ。 
あたしの思考は、麻痺した・・・・・・・・      
一体全体、なっ、何なのよぉ〜〜〜〜〜〜!!     
                          
「てめぇ、リナの何だ?」              
                          
まるで、喧嘩腰のガウリィ・・何でそんなに怒ってるの?
                          
「保護者だ」                    
                          
父ちゃんは、そのケンカに首を突っ込む様に、今度は、 
あたしの頭の上に自分の頭を乗っけて、ガウリィを   
見上げる形で、はっきり キッパリと言う。      
                          
そんな父ちゃんの言葉を聞いたガウリィは、父ちゃん  
そっちのけで・・・・・               
                          
「リナ、お前さん オレの他に 何人の保護者が、    
 居るんだ?」                   
                          
と言ってきた・・・・ガウリィ、アンタって・・・・・・
                          
「へっ?」                     
「天然は、健在か・・・」              
                          
父ちゃんの声が、頭の上から 降ってくる。      
昔っから 天然だったのか、ガウリィって・・・・(汗)
                          
「3人いるわよ、一応」               
                          
あたしは、家族の人数を言う。            
                          
「3人、・・それが そのうちの1人か?」      
「それだと・・・」                 
                          
それって、父ちゃんを物みたいに・・って父ちゃん、  
売られたケンカを買う様なオーラを出さないでよぉ〜。 
                          
二人の間に挟まれて、あたしは、心底 困っていた。  
取り敢えず、根っから 根本的な事から、理解していない
であろう ガウリィに対して、あたしは、頭を抱えたい 
のを、堪えつつ口を開く。              
(父ちゃん、いい加減 頭を退けてくれないかなぁ・・)
                          
「ガウリィく〜ん、保護者って言うのは、普通     
 誰の事を言うのかなぁ?」             
「へっ? 誰だっけ?」               
                          
おひっ・・・5才児でも 確実に答えられる事に、   
何故 疑問形で返す・・・・             
                          
「バカだ・・コイツ」                
                          
頭の上での、父ちゃんの呟き・・・          
そんな言葉を聞きつつ、あたしは、父ちゃんから、離れ 
 こめかみに、青筋を作りつつ。           
                          
 スパ〜〜〜ン!!!!               
「両親でしょうがぁ〜〜〜〜!!!!」        
                          
叫びながら、ガウリィの頭 目掛けて、スリッパを   
命中させていた。                  
                          
今のは、ナイスな音vvv(はぁと)         
                          
「3人・・、父ちゃん, 母ちゃん, 姉ちゃん」     
                          
頭を掻きむしりつつ、あたしは、自称保護者代理に、  
分かる様に言う。                  
                          
「えっと、リナ 分かる様に、言ってくれ・・・・」  
「はぁ・・」                    
                          
・・・ が、無駄だった。              
                          
「リナ、先に行っちまうぞ」             
                          
そんな あたしを見ていた父ちゃんが、痺れを切らしたの
か はたまた 呆れきったのか・・・そんな事を言った。
                          
「待って、あたしも行くから」            
                          
慌てて、あたしは、父ちゃんを止める。        
あたしが、ガウリィに向かって 次の言葉を紡ごうと、 
口を開いたら、いきなり 父ちゃんが、ガウリィとあたし
との間に、スッと入って来た。            
                          
「ガウリィ、一回しか言わんから よ〜く聞け!」   
「何だよ」                     
                          
会話に割り込んで来た父ちゃんは、ガウリィに向かって 
はっきり 言い放った。               
                          
「リナは、俺の娘だ」                
                          
                          
                          
  ピュウ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ        
                          
その瞬間、ガウリィの動きが、止まる。        
                          
「さっ、行くぞ リナ」               
                          
そんな ガウリィを無視して、父ちゃんは、あたしに  
向かって、言葉を掛けた。              
                          
「あ、うん。父ちゃん、でも・・・・」        
「コイツなら、今は、動かんだろ」          
                          
あたしが、何故か固まってしまったガウリィを困った  
様に見ていると、父ちゃんが、ガウリィの心境が、   
分かっている様な口調で、そんな事を言っていた。   
                          
「ちゃんと、後で来てよね ガウリィ♪」       
                          
ガウリィに それだけの事を言うと、あたしは、    
父ちゃんの腕に、自分の手を絡ませて ウキウキ気分で 
帰って行く・・・あたしの家へ。           
                          
早く、母ちゃんや姉ちゃんに 逢いたいなぁ・・・   
そう言えば、風の噂で 姉ちゃんが、変なペットを   
飼ったて聞いたケド、可愛いのかなぁ?        
まっ、帰って見ればいっか!             
あたしは、石化したガウリィを余所に、一足早く家路に 
着いた。                      
                          
                     Fin