虹の下には・・・ |
街から少し離れた家に向かってあたしは娘と歩いていた。 午前中はずっと雨が降っていたが 午後には嘘のように晴れ渡り、大きな虹が空にかかっていた。 「ねえ、ママ?にじがでてるぅ。」 少し舌っ足らずな喋り方で、空を見上げあたしに言う。 「ん?・・・あぁ、ホントに、おっきいね〜」 あたしも空にかかった大きな虹を見た。 ホントに大きな虹。 七色に光っている。 「あ!ママぁ・・・あのね、えっとね、この前ね、アメリアお姉ちゃんが言ってたのぉ! にじの下にね、えっと〜・・・・・ん〜っと・・・・あ!そぅ、『愛と正義が埋まっているんです!』って。」 ポーズ付きで、しかもアメリアの口調までまねして言う。 どうでもいいけどアメリア、変なことをあたしの可愛い娘に教えないでよ・・ そう思っていると、また話し始める。 「・・・・・でもね、ゼルお兄ちゃんはねぇ・・・ジャスティーちゃん抱きながらね、 ニコニコしてね・・・ん〜っと、『真実じゃないのか?』って、言ったのぉ! なんかね、話し方はね、・・えっと、”くーる”にきめたみたいだったけどね、お顔がねぇ、でれれ〜んってなってたのぉ♪」 ジャスティーというのは、今年産まれたばかりのゼルガディスとアメリアの子供である。 初めての子供と言うことで、今までのイメージはどうしたことか、ゼルはすっかり親バカになってしまった。 あれは、ガウリイ以上かもしれない・・・・・。 「ゼルがそう言ったの?」 「うん♪それでね、その後にね、パパがね、 『虹の下には、宝物があるんだよ。』って言ったのぉ。 でもね、どんな宝物かは、教えてくれなかったの・・・そのかわり、 パパの宝物のこと少しだけ教えてくれたの♪ えっとぉ・・・パパが見つけた宝物は、世界に一つしかなくて、小さくて・・・んっと・・・柔らかくて、 暖かくて・・・それから、それから、宝物をもう一つ作ってくれたんだって! それでね、あたしがね、宝物を見つけたらパパに見せなきゃいけないんだって! でも、その後は難しい言葉でわかんなかったのぉ」 娘が話している内容に思わず赤面してしまった(////)。 あとから、アメリアに聞いた話によると、ガウリイはこう言ったらしい。 『まず、父さんが、筆記試験!実技試験!面接をした後 いかにお前のことを愛しているかを、原稿用紙1000枚以上書かせ評価する!』っと。 ・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱ、ガウリイの方がゼルより親バカ・・・・・・ 「それでねぇ・・・・・・ママ聞いてるぅのぉ〜?」 いまだ、赤面していたあたしを見上げ聞いてくる青い瞳。 ガウリイ譲りの金髪は、あたしと同じように気まぐれにはねている。 「きいてるよ〜、それで?」 そう言いながら微笑むと、愛しい娘は嬉しそうに笑い、一生懸命話し出す。 「えっとね!そしたら、アメリアお姉ちゃんの、お姉ちゃんがね、 お〜っほっほっほっほっほ・・・って来てね、何か言おうとする前にね、 ジャスティーちゃんが泣いちゃってね、フィルおじちゃんがね、 ずるずる引きずってねでてっちゃったのぉ♪」 何となく想像が付く・・・初めてあの、ナーガがアメリアの姉と知ったときは、ハッキリ言ってセイルーンも終わりだと思った・・・・。 しかし、よく考えたら、ドワーフみたいな王子様や、正義オタクの第二王女の他に、脳味噌腐った、露出狂の王女が1人増えたところで、いいんじゃないか?と開き直ってしまった・・・。 アメリアと結婚した、ゼルは、苦労しそうだけど・・・・ 「それでね?・・・えっとねぇ、ママはにじの下に何があると思うの?」 眼をキラキラ輝かせて聞いてくる。 「え?あたし・・・?・・・そ〜ねぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そのときあたしは、ふと空を見上げその虹の落ちている場所を見た・・・ 「・・・・・ママはね、暖かい場所だと思うな〜」 「暖かい場所?パパと同じの、暖かい?」 「う〜ん、同じ・・・・・・かな?でもね、ちょっと違う。 ママの暖かい場所は・・・・・・・ほら。」 あたしは、丘の上の白い家を指さした。 虹は、その家に降りているように見えた。 「あ!おうち!・・・虹の下におうちがあるよぉ!」 きゃっきゃとはしゃぐ、娘を見つめる。 「おうちが、ママの宝物なのぉ?」 「そう、おうちも、家族もみ〜んなママの宝物♪」 そう言って微笑むと、笑顔全開で娘は言う。 「あたしも?パパもみんな宝物?」 「そうよ」 「えっとね、じゃあ・・・あたしの宝物もパパとママぁ♪ でもね、もっと大きくなってね、いろんな虹の宝物見つけるのぉ!」 そう言うと、うちに向かって走り出した。 途中で振り返ると、大きく手を振る。 「ママぁ〜、はやくしないと、寂しがり屋のパパが泣いちゃうよぉ〜」 くす・・・・ 思わず笑ってしまう。 昼寝をしていた彼をおいて娘と買い物に行ってしまっていたのだから。 きっと、捨てられた子犬のように情けない顔をしているだろう。 「そうね!はやく帰ろう!」 あたしと娘は、丘の上の家に向かって歩き出す。 空にかかる虹を見上げながら・・・。 ・・・・・・・・・・あなたは、虹の下になにがあると思いますか?・・・・・・・・・・ 〜END〜 |