祈 り

鬱蒼とした森の中を一組の男女が歩いていた。 照りつける午後の太陽は、容赦なく二人の体力を奪っていく。 と言っても正確にはへばってるのはもっぱら女の方であったが。 「あづい〜〜〜 なんでアンタはそんなに元気なのよ……」 　うめいた女は、少々くせのある栗色の髪と紅い瞳が印象的な、 まだ少女とも女性とも言える、微妙な年頃であった。 　名前をリナ＝インバースという。 　地につかんばかりの長い黒マントと、同色のショルダーガードにバンダナ。 そしてジュエルズ・アミュレットをところどころに施している短剣やイヤリングをしている所からも、彼女が魔道士であることは容易に分かる。 　――まぁ、それを昔魚屋だとかウエイトレスだとかと途方もない勘違いした人間も。 いることにはいるのだが。 「しかたないだろ？　もともとお前さんとオレとじゃ、体格からして違うんだから」 　やや呆れた声で返してきたのは彼女の自称保護者で、かつて例の”途方もない勘違い”とやらをしでかした男。名をガウリイ＝ガブリエフ。 「何よぉ…そんなことわかってるわよぉ……！」 　彼はじゃまな枝を手にしている剣で少しづつ切り落としながらさらに言った。 「だいたいな。ここに行くって言い張ったのはお前さんだぜ？ 『お宝さんを捨てていくなんてできないわよ！』 とか言ってな。 　したがってオレにあたるのはお門違いだぜ」 う゛っ… 　一瞬言葉に詰まるリナ。だがそれも一瞬のこと。 すぐに反論を開始する。 「そっ…そんなこと言ったってアンタ今の状況わかってんの！？ あたし達の仕事がなくなってから…もとい、旅費が稼げなくなってから一体何日たってると思うのよ！」 　確かに、ここ数日の間、リナ達がやるような仕事――つまるところ、デーモン退治だとか盗賊退治だとか、要人の警護だとか、そんなことが必要とされない程世間は平和であったのだ。 　盗賊いびりをしようにも、ここら一帯では盗賊のとの字もでてこない。 とほうに暮れていた二人に『ここらにかの有名な魔道士の隠れ遺跡がある』とかないとか、と言った朗報（？）が入ったのが一昨日の昼。 　それを聞くが早いが飛び出して行ったわけだが…… 「――で、だ。結果はどうなってんだ？　リナ」 　ガウリイの冷淡な声が、したたかにも事実を告げており、リナにつきささる。 　はっきり言って状況は悪化してるとしか言いようがなかった。 「〜〜〜っあーったわよ！ …今回ばかりはあたしも悪かったと思うわ」 　とうとうリナも自分の非を認めた。だが、だからといって今の状況が変わるわけでもなく。 　ただひたすら、歩くだけであった。 「？……リナ」 　と、ガウリイが何か見つけたらしく、後方にいるリナを呼んだ。 「どう…した…のよ」 　こりゃぁ本気で早くどこかに休ませないと…… 　息も途切れ途切れに言うリナに、ガウリイは内心、彼女をここまで疲労させた自分に舌打ちした。 「いやな、向こうの方に少しひらけてる場所がありそうなんだが…… どうする？　休むか？」 「そうね…そこで一回休みましょうか」 　リナはすぐに賛成した。それだけ疲れているという証拠である。 　やれやれ… 　ガウリイはかぶりを振りつつリナの所まで行くと、さっとリナを横に抱き上げた。 「なっちょっ…ガウリイ何やってんのよ！！」 　いきなりの彼の行為に顔をかなり真っ赤にして叫ぶリナだが――やはり疲れているのだろう、それ以外、抵抗というものはない。 　それに…どことなく声にも疲れが見え始めていた。 「疲れてんだろ、ムリすんな」 「それだったら、アンタだって……！」 　だいたい、『お姫さまだっこ』なんて乙女に軽々しくするんじゃないわよ！！ 　内心思いっきりガウリイに毒つくリナ。 だが彼女の半分パニクッた思考回路は、無意識のうちに、しかし確実にガウリイを『異性』として意識していたのを。当の本人達は知っていたのだろうか。 　おそらく…ガウリイぐらいは。特技の『野生のカン』というやつで理解していたのかもしれない。 はぁぁぁ。 　ともあれ、リナの態度を見て大きく溜息をつくガウリイ。 　『何もわっかてない』と、その表情が雄弁に語っている。 「あのな、リナ。お前さんよりはオレは体力があるんだから。 こんな時ぐらい、少しは頼ってくれねぇか？」 「……わかった」 　少々顔の照れは隠せないものの、彼女はすっと体の力をぬくと、彼の胸に顔を埋め…数秒の内に眠りに落ちた。 　それを見て満足したのか、ガウリイは目的の場所に向かって歩き始めた。 　目的地に着いた彼は、“それ”を見て、思わずうわずった声をあげていた。 「何だ…コレ？」 「……がうりい……？」 「――あっ　スマン起きちまったか」 　言って”それ”のある方へガウリイは視線を戻しつつ、 「いや、こんな所に墓があったもんだから…つい」 「お墓？」 　そう聞いてついリナも墓の方を見る。 　墓は、周りにたくさんある木の中でもとりわけ小さい、キンモクセイの木の下に、まる でその木に守られるようにして在った。 「っ！　これは……！」 どさっ 「きゃっ　……いったぁい」 　突然リナはガウリイの腕のなかから落とされ、しりもちをついた。 　いつもならそこですぐ彼女のもとに駆けつけるはずの自称保護者は、何かにとりつかれたようにふらふらと墓のもとへ歩みを進めている。 　その顔には驚愕の色が隠せないでいた。 　彼は墓のもとまで行き、その場にひざまずいて、つぶやく。 「ルイス…」 　それは、この地に眠る、墓の持ち主の名。 「ガウリイ…知ってんの、その人…」 　なんとなく、介入してはいけない気がして。 ためらいながらもリナは、おそるおそる、と言った感じで疑問を口にした。 　彼は、非常になつかしそうな、穏やかな笑みをして彼女の問いに答えた。 「あぁ…オレの…大事な人。ってやつかな」 　だが彼の笑みには、どこか悲しいものがあったことを。リナは気づいただろうか？ 　　　　　　　　　◇◆◇◆◇◆◇◆ 「ギャァァァァァァ」 　血が吹き出す。 「やっ…どうか…いのち…だけは…」 　オレがそんなこと聞くとでも思ったか？ 　剣を一閃させる。 　男の胴体は真っ二つに割れ、もはやただの肉の固まりと化して、地に転がる。 　肉塊の切れ目から見える血管は何度か痙攣をした後、静かになる。 ずしゃぁぁぁぁ 「このおぉぉぉぉぉおおっ！！」 　雄叫びをあげて後ろから切りかかってくるやつが一人。 　オレの相手じゃないな… 　相手に聞こえないよう小さくつぶやきつつ攻撃をかわす。 　横に、縦に、斜めに、次々切りつけてくる相手。 「このっこのっこのっ」 　そうとう焦ってきてるな… 　真上から切りつける相手の剣を受けとめ、力任せに押し返し、その力を利用してそのまま斜めに切りつける！ 「あっ…くっ……」 　返り血一つ浴びずに、この戦い――いや、こんなものを戦いと呼べるのか？――は終った。 　でも、オレは血で汚れている。 　今までたくさん人を殺（き）ってきたから。 ――生きるために。 　だから今サラ、そんなことに罪悪感なんてない。 　だけど… 　オレは本当にコレで良かったのか……？ 　ふと自問してみる。 「ガウリイ！」 　後方――つまるところ町の方だ――から聞こえてくる声でオレは考えることを止めた。 「連中は…っ――！」 　『連中はどうした』という言葉の代わりにやつらは小さな悲鳴をあげる。 　やつら――今オレの目の前にたどり着いた、５、６人の男達。 全員、斧やら剣やら槍などで武装している。 　うでの方は…なかなか、といったところだろうか。 　いわゆる、オレの仕事仲間。というやつだ。 　連中はオレを――というよりもオレの足下にあるモノから眼を離せずにいた。 　人間の死体。いや、バラバラに切り刻まれてもうただの肉塊と化している物体が、オレの足下にある。 　肉塊（やつら）の血でできた池の上に返り血一つ浴びずに立っているオレの姿は、さながら『死神』の様に彼らの眼に映っているかも知れない。 「殺し（しごと）は終わった。 悪いがオレは先に報酬を貰いに行く」 　呆然としている彼らに、オレは意識したわけではないが冷淡な声で言う。 　『仲間』の内の誰かが言った言葉が、その場から去りつつあるオレの耳に聞こえた―――― 「死神…」 　そう。 　オレは仲間内から“そう”呼ばれている。 　そして、オレをそう呼ぶ連中がオレに向ける視線にはいつも、『恐怖』か『絶望』かある いはその両方があった。 「つまり、オレはどこでも独りってことか…」 　家にも…この地にも…。いや、この世界中どこを探しても無いのかも知れない。 　オレを受け入れてくれる、そんな『楽園』は。 　時は深夜。うるさいように昼間そこらをかけづり回っているガキどもも。狂ったようにどうでもいいような噂話をしゃべり続ける女どもも。 　今はいない。 　オレはどちらかと言えば、そんな夜の方が好きだった。 　独りでいる方が気が紛れるし、気が向けばそこらの女を抱けばいい。かかる女はいくらでもいる。 　ただし、それも最近はある男のせいでなかなかそうはいかなくなってしまったが。 「ガウリイ！　まってくれよ。 おいっ　おいってば！」 　振り向いた先には一人の男。 　ルイス＝ベーン。オレよりも若干年上の同業者。 　すこし前にとある仕事で知り合ってから、なにかと会うことが多く、今回もまた同じ仕事を受けていた。 「なんだ…」 　こいつに会ってから、オレの調子は狂いっぱなしだ。 　その恨みも込めて、オレはルイスを睨んだ。 「おいおい、そんなこわい顔をするなよ。 ただ酒でも飲もうって言ってんじゃないか」 　オレのこの視線にも、ひるみもしない。 　ったく、なんなんだ奴は。 「……」 　やめよう。かかわるまい。 　そう決心するとともに、ふいっと向きを変える。 　さて…今日はどこで飲もうか… 「でな、そいつのあの時の顔ったらよ。 もうおかしいのなんのって」 「……」 　で、数時間後には、オレはルイスとともに酒を飲んでいた。 　こめかみのあたりがかなり、ひきつってるのがわかる。 「おいガウリイ。聞いてんのか？」 「……」 くいっ 　一口、酒をあおる。いつもより酒の度がきついような感じがするが、まぁそれはどうでもいい。 　となりにいるこの男の存在を、少しでも紛らわすことができるなら。 「そういや、こうやってお前さんと酒を飲むのって初めてだよな」 　ふと、何か思い出したようにポンと手を打つルイス。 　オレも、とりあえず相槌を打った。 「…あぁ」 「なあ、お前さんは笑うことあるのか」 「？」 　今まで笑い話をしてたかと思えば、突然あんなことをいいだして、さらには急に変なことを問いかける。 　やっぱり…ルイスは変だ。 「笑うって言ってもだ、心から笑うことがあるか、ってことだぞ」 「――ない。傭兵（このしごと）にそんなもの必要ない」 　感情なんて、殺し合いの中では邪魔なモノでしかない。 　オレはこの数年、それを思い知った。…こいつはそんなこともわからないのか？ 　そう言ったら、ルイスは去り際にこう言った。 「俺は…いつか、お前が心から笑うことができる日が来ることを。 祈ってるよ」 何故？ 『オレにはそんなもの必要ない』って言ったのに。 殺すには必要ないのに。 なんであいつはそんなことを言うんだろう？ なんで… ばあちゃんと同じことを。 同じような眼で。 あいつは言うんだろう？ ――遠い未来。 　　　　お前がいつか心から笑える日々が送れることを祈ってるよ―― なんで… 　　　　　　　　　◇◆◇◆◇◆◇◆ 　ルイスとは、“あの日”以来もう会うことはなかった。 「腕のいい奴だったが…まさか死んでるとはな…」 「……」 　リナは、ガウリイにかける言葉を見つけることはできなかった。 　人の死は突然訪れる。避けることはできない。 　それは…彼女も旅の中で十分知っていたから。 　レゾ、サイラーグの人々、アリア、マリアベル、ディラール、ジェイド… そして、ルーク、ミリーナ。彼らは…自ら望んで死んでいったのか？ 　否。むしろ、皆精一杯生きようとしていたではないか。 　なのに… 　リナは、うつむいたまま顔を上げることができなかった。 　自分はなんて無力なんだろう。 　こんな時、彼に何一つ言葉をかけてあげることもできない。 　こんなんじゃぁ、慰めることだって… 　彼は今までたくさんの言葉をくれたのに。 「リナ。ありがとな」 「――――っ！？」 　思いがけないガウリイの言葉に、リナは彼が一体何を考えてるのかさっぱりわからなかった。 「な…なんで…」 　声がかすれている。 　ガウリイはいつもの、あの穏やかな笑みをうかべてある場所を指さす。 「ホラ。見ろよ、ココ」 　指さした場所には、ルイスが死んだ日が彫ってある場所。 「２月…１２…日… ――――って今日！？」 「あぁ。この森に入ったのは…ルイスの命日にここに来ることができたのはリナのおかげだからな。だから、サンキュな。リナ」 くしゃり。 　呆然としていたリナも、ガウリイのやさしいおだやかな笑顔と、自分の頭をなでる彼の手が、何故か気持ちいいのを感じていたら。 　自然と顔にも笑みがうかんだ。 「も――っ 髪さわんないでっていつも言ってんでしょ！」 「ハイハイ」 「あっ ガウリイちゃんと聞いてんの！？」 「さぁなぁ〜〜」 「き〜〜〜〜〜っ！！　くやし〜〜い〜〜！ こうなったら……！」 「うわっ　リナこんな所でドラグ・スレイブはやめろ！」 「問答無用！」 「おっおおおお前疲れてたんじゃなかったのか！？」 「ふっ　そんなものアンタへの怒りで吹き飛んだわよ！」 「ンなバカな！」 　ガウリイの訴え（叫び？悲鳴？）などリナはとうの昔に聞いちゃいない。 　とにもかくにも身の危険をひしっひしっと感じた彼は、あたりに目を回すと、さっそく見つけた“切り札”をつかう！ 「こっここにはルイスの墓があるんだぞっ」 「……」 　そう言われては、さしものリナも呪文でぶっ飛ばすわけにはいかない。 しぶしぶ、といった感じで呪文の詠唱を止めるリナ。 ふうぅぅぅ。 　大きく溜息をついて安堵しながらその場に座り込むガウリイであった。 ――なかなか楽しそうじゃないか？ 　　　　　　　　　　え？　ガウリイよ。 「―――！！」 　突如聞こえた声は、間違いなくルイスのもの。 驚いた彼は、思わず立ち上がった。 ――どうだ？　今の旅は…って、お前の顔を見れば分かるか。 　　　　　　まっせいぜいその娘に感謝するんだな。 　再び聞こえてくる声と、おそらく彼にしか分からないであろう誰かの気配が一つ。 　そういう…ことか… 　苦笑すると、ガウリイは静かにかぶりをふった。 「どしたのガウリイ？」 「いいや。なんでもない」 　そうリナに言うと、空を見上げる。もう日は落ちて、いくつかの星が見え始めていた。 「もう夜ね」 「あぁ…今夜はここで野宿するか」 　彼の提案を、リナはすぐに承諾した。 　夜。 　火の番をしていた彼は、突然現れた気配を気にするでもなく。 　それどころか、その気配の主に向かって言葉をかけた。 「ルイス。オレは…変われたかな？」 ――あぁ。　今のお前の方がオレは好きだな。 「男に好かれてもなぁ…」 ちょっと困った顔をするガウリイ。 ――バカか。 　　オレだってごめんだよ。 「そうか。それは良かった」 ――ったく。ともかくだ、オレの祈りは届いたわけだ。 「あぁ。 そうだな。…今度は、オレから祈らせてもらうよ」 ――ほう。一体どんな？ 「お前が地獄に行くこと」 ――オイッ 「冗談だ。無事に天国に行けることだよ」 　ある意味、『混沌』という名の天国に行ったことのある彼としては。 　それは少しおかしかったけれど。 ――お前に冗談を聞かせてもらうとはな。 　　　　ここにとどまっておいて正解だったかもな。 　気配は、少しづつだが薄くなってきている。 「…行くのか」 ――あぁ。ホントはあんまし長くはいられねぇんだ。 「…そうか。元気でな」 ――お前こそ。 　　　かわいい彼女と仲良くな。 「おまっ――！」 　あわてて振り向いた先には、もう誰もいなかった。 　ただ、森がかすかにざわめくのみ。 はぁ。 　溜息をつくと、彼の視界には一つの影。 　それは、彼がようやく見つけた、世界で一番大切なヒト。 「まったく…最後までよくわからんやつだったな。 まっ、いいか。 　――さて、と、オレのもう一つの祈りは…」 　一体 いつになったら届くのやら。 　彼は一人、苦笑した。 　 　　　　　　　　　　　お・わ・り♪ お・ま・け♪　…もあったりして（笑） 「だれ……？」 　闇に 向かって、あたしは言葉をかける。 ………… 　なんの反応もなし。 　だれもいない？　だってここはあたしの夢の中だし… 　…いや、確実に…いる。 　女のカンとでも言うやつが、あたしにそう告げていた。 　なのになんのリアクションもないとは。 　相手の態度にすこし腹が立って、心持ち、トーンが低くなった。 「人に何か言おうって時は、まず自分が姿をみせるってのが礼儀ってもんじゃないの？」 　まして、その相手が超美少女魔道士リナ＝インバースなら。なおさらである！ ――そういうもんか？ 　 　やっと聞こえてきた声と姿は、ガウリイと同じぐらいの――いや、すこし年上かも知れない――傭兵姿の男だった。 「そういうもんよ。 …で、アンタだれ？　人様の夢に入り込むなんて、いい根性してんじゃない」 ――そいつはどうも。　まっ　安心してくれ。 　さすがの俺も死んでまで『盗賊殺し』とヤローなんて思わねぇからよ。 「『死んだ』…？　じゃぁアンタ幽霊なの？」 　あたしはその“自称幽霊”発言に眉をひそめた。 ――そういうこと。 　いろいろ有名なアンタだ。そろそろ気づいてんじゃねぇか？ 　俺の正体によ。 　言われてあたしは首をひねった。 　…………っ！ 「まさか…ルイス……？」 　あたし達が野宿している、そのすぐそばにある墓の持ち主である。 　そして…ガウリイのかつての仲間と思われる人。 ――あぁ。正しくは、ルイス＝ベーン　だけどな。 　いちいちそこまでこだわらなくても… 　さすがガウリイの知り合いってとこだろうか？ ホラ、類は友を呼ぶって言うじゃない♪ 「で、一体なんの用？ 　あたしよりも、ガウリイの方に行った方がいいんじゃないの？」 ――ちょっと…アンタに礼がしたくてな。 　昔のあいつじゃぁ…おっと。これは言わない方がいいな。 　ともかくありがとう。リナ＝インバース。 　と、同時にルイスの周りの闇が濃くなっていく。 「ちょっ…一体何のこと！？」 　あたしはあわててルイスの方に向かって走る。 ――そうそう。一つ言うのを忘れてたな。 　　あいつのこと…よろしくな。 　　それと…早く気づいてやった方がいいぞ。アレには。 　それだけ言うと、ルイスの姿はきっぱりくっきり消えていた。 　自分の夢に一人残されたあたしは、ただ呆然とした。 「なんだったのよ…アイツは…」 　その問いに答えてくれる者は、当然といえば当然なのだが。誰もいなかった。 「――おはよう 、ガウリイ」 「あっあぁ、おはよう」 　ただ何故か。 　その次の朝あたし達は、ぎこちなくあいさつを交わしていた。 　理由は…あたしの場合は…〜〜〜〜〜〜〜〜っ！　秘密であるっ！ 　もう―――っ！　アレってなんなのよぉ〜〜〜〜 　すこし期待しちゃうじゃないのっ 　まったく、このバカクラゲにあのルイス（と書いて変人と読む）っ！ 　あたしを混乱させた、このツケは高くつくんだからね！ 　覚悟してなさいよぉぉぉぉ！！ 　　　　　　　　　◇◆◇◆◇◆◇◆ ――気づかねぇ方がおかしいと思うけどな… 　 　上から二人を見下ろしていたルイスさんが、苦笑しながらつぶやいたのは。 　秘密ですね♪ 　……ていうか、いいげんさっさと『向こう』に行かないんですか？あなたという人は… ――自分の墓の前であんなことやられてみろ。 　　　これ以上おもしれぇもんはないぜ？　なぁ。 　そうですねぇ。 　確かに、このままからかって二人をくっつけてしまうというのもおもしろそうなんですが… 　それよりも、負の感情を大放出して貰うってほうが♪僕的にはうれしいんですがね♪ ――まったく。お前らしいな、ゼロスよ。 　お褒めの言葉と取っておきますよ。 　それに…もしリナさん達をからかったとしてですよ？ばれたときに、それぐらいの報酬は貰っておかないと。わりにあわないんですよ。 　キレたリナさん達は、何をするかわからないんですから。 　…それにしても、ホントガウリイさんは変わりましたねぇ。 　正直、驚きましたよ。 ――あのリナ＝インバースのおかげか。 　そうですねぇ。その辺さすがリナさん。 と、言ったところでしょうかね。 　そうそう、ルイスさん。このままこの世界に留まるんでしたら… 　どうです？　仲間になりません？ ――やぁなこった。だれが魔族なんかになるかよ。 　　　えぇ？　生ゴミ魔族さんよ。 　あっひどい！　誹謗中傷ですよ！人権無視はいけないんですよっ！ ――お前に人権なんて無いだろうが… 　あるんですよ！ ――どこに？ 　くっ　それはですねぇ… ――『秘密』　か？ 　ルイスさんのいぢわるっ 　　　　　＜お・ま・け♪＞も終わり♪ どもども♪ いかがだったでしょうか？ なんか最後のルイスとゼロスの掛け合いが… めっちゃベタベタですなぁ…（汗） でも、これ書いてて最終的に書きたかったのは ゼロス＆ルイス、ガウ＆ルイスの会話だったりします（＾＾） ちなみに、ガウリイが翌朝ぎこちなかったのは、あんまりにも無防備に眠っちゃう リナちゃんを見てたら、結局がまんが………なんて事が（笑）