She looked up at the sky,and I wish…







俺達は野宿をしていた。
そう、俺『達』だ。
もう、一人じゃない。
横には俺の大好きな女の子、リナがいるから。
本当はもうリナは女の子じゃない、女性だ。
それは痛いほどにわかっているけど。
保護者でなきゃ俺は傍にいられないから、まだ女の子と呼ぶしかないのだ。
それがたとえ心の中であったとしても。
自分の心を抑える為に、俺は彼女をまだ女の子だと納得させようとしている。

そんな日々を過ごしているある野宿の日だった。
その日は空いっぱいに星があって、吸いこまれるかと思うほど星が近くに見えた夜
だった。
横になって空を見上げた姿勢でリナが声をかけてくる。
「ガウリイ、起きてる?」
「起きてるぞ。」
「すごい星ねぇ」
「ああ、綺麗だよなぁ…」
「たまには、野宿もいいかもねぇ…」
いつもは散々野宿を嫌がるリナ。
だが今日のリナはそんな事を言って、星を眺めている。
思わず苦笑する。
それを悟られたくなくて、俺は星を見上げる。
本当に満天の星空。180度見渡すかぎりの星。
そしてしばらく俺は星に魅入っていた、が。リナがまた声をかけてくる。
「ねえ、ガウリイ…こんな話、知ってる…?」
「ん〜?どんな話だ?」
「人はさ、死んだら星になるって………」
「ああ、そういえば…ばあちゃんが昔、言ってたような気がするなぁ…それがどうか
したのか?」
俺は起きあがってリナの方を見る。
リナは横になったまま、視線も星に向けたまま、静かな調子で答えた。
「ん…別に……たださぁ…それが本当なら、この星達の光って…あたしを断罪しよう
とする光かもって、らしくない、馬鹿なこと考えただけよ。」
「断罪?」
リナは苦笑して続ける。
「そ、あたしのせいで何人の人が死んだ?そんなの…わからないぐらいいるじゃな
い、サイラーグでのこと、ガイリア・シティでのこと……数えていったらキリがない
わよ。誰もが、死にたくなかったでしょうね。なのに、あたし一人のことで、たくさ
んの人達が命を落とした。なら、もしその人達が星になってたら…あの光はあたしを
呪う光よ。」
俺は淡々と語るリナを見つめた。
今のリナは何故かひどく小さく見えた。
いつもの存在感は影を潜めていて、俺は彼女をどうしようもなく守りたくなった。
「それでさ、もしあたしが死んだとして、もし星になったら、きっとあたしは空から
追い出されるんだろうなって思って…ね。仕方ないわよね。そうされても文句は言え
ない。」
俺は立ち上がってリナの近くにいき、しゃがんでリナの顔をまじまじ見ると、その頬
に手を触れて……
ぱんっ
両手で軽く彼女の頬を叩いた。
「な、なにすんのよ!?」
「バカ。」
「な……!」
リナの抗議の声を無視して続ける。
「一人で全部背負い込むなよ。俺が半分引き受けるから、一人で悩むな。何のための
相棒、保護者だよ。一人で背負ったって重いだけじゃないか。…それに。人が星にな
るっていったな。迷信だろ?お前さんらしくない。いつもみたいに笑い飛ばせよ。聞
くけどな、リナ。たくさん人が死んでから、夜空の星は増えたか?その数と同じだ
け。んなわけないだろ?そんなことになったらとっくの昔に夜はなくなってるよ。な
?そうだろ?ほら、リナ。いつもみたいに笑えって。そんな顔、お前さんには似合わ
ないだろ。」
リナは、呆然としていたが、突然呆れたように笑いだした。そして笑い転げた後、
言った。
「…まったく、天下のリナ=インバースとあろう者がくらげに説教されるとは思わな
かったわ。ま、あんたの言う通りよね。悩むだけ損だし。なんか少し、楽になった
わ。」
それから少し赤くなって言った。
「ありがと、ガウリイ……」
俺は笑う。彼女が愛しくて。
「どういたしまして。ほら、夜更かしは美容の大敵だろ?さっさと寝ようぜ。」
「ん……おやすみ。ガウリイ………」
しばらくすると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
俺は起きあがって彼女の顔を見る。
まだあどけなさの残る顔。
俺はまた寝転がって星を見る。

―――もし。

もし本当に、人が死んだら星になるのなら。
リナが星になれば俺はリナの一番近くを回る衛星になりたい。
それが俺の願い。
もしそうなったら…誰も近づけさせない。
隕石からも何からも守ってみせる。
自分自身を滅ぼしてでも。
近づけないけどそれでもいい。
本当はよくないけど…リナの傍にいられるのなら。

そこまで考えて、今の自分と同じだと気がつく。
俺は苦笑して、目を閉じる。心地よい睡魔が襲ってきた。

今もこれからも、お前の衛星でありたい。
リナが滅びてしまえば、俺は滅びてしまうだろう。
だって俺はリナの衛星だから。
リナなしでは生きられない。
そしてまた生まれ変わりたい。
お前の傍に。

それが俺のたった一つの願い。

〜〜おわり〜〜