夏のアト番外編(男性陣)






第三話  手にするモノは・・・


彼は魔導書を読もうとした。
が、すぐに放り出した。
どれほど意識を割いても無駄だった。

ため息をつき、彼は窓辺に向かう。
その手には酒と一枚の紙が握られていた。
それは・・・とてもシンプルだった。


『ゼルガディス殿、すまんがアメリアを頼む。

P.S. 
結婚式はセイルーンでな
親として、娘の晴れ姿は見たいからのぅ』


書き主そのままに、思いやりのあふれた手紙だった。
受け取った側にとっては悩みの種だが・・・

・・・・まったく
いつも人を振り回してくれる
王族だという自覚はあるのか?
こんなことが本当にできるとでも?
俺には・・・・

否定したい、しかしできぬ想いもあった


『好きにしろ』

言った自分に、微笑む彼女
そう彼が今、唯一守りたいモノ
だが・・・

あのときはそれでいいと思っていた
しかし、旅を続けるうちに沸き上がった問い

彼女と共に・・・その資格があるのか?

清廉なる輝き、まっすぐな魂
それに引き替え・・・
醜い身体、暗き心

故に思う
・・・・別れなければ、守らなければ

同時に
・・・・己れだけのモノに、汚したい

どちらも心からの願い
相反する、矛盾した切望
絆の証を返したのも・・・

もう離れないから?

もう終わりにするから?


「俺は、いったい・・・アメリア」

月を見上げても、答えは出なかった
分かっているのは・・・

この光りのように、闇を照らす存在

ただ、それだけだった


彼は気づいていない
大切な光りは生あるモノ
だから・・・自ら飛び込んでくる
そんなこともあるということを

まだ、知らずにいた
気づいているのは・・・・だけだった






第四話  猛き、その叫びを


「まったく・・・どこまで行ったんだ?」

彼は焦っていた
油断をした隙に彼女はいなくなっていた
それが、彼を追いつめていた

いつものことだった
子供扱いする自分に、ふてくされる彼女
だが、今日は・・・・

「あんなに怒るなんてな。
まさか、あいつ・・・嫉妬した?
・・・リナに限って、そんなはずないか」

沸き上がる希望を、自らうち消す
それは今の場所を守るため
だから先ほども・・・


『リナが男に絡まれることはない』

本気でそう思っていた
彼女に言ったことではない
含まれていたのは・・

側にいる限りそんなまねはさせない
そして、俺が離れることはない

その決意ゆえに・・


彼女は大人になっていく
・・・彼の不安は強くなる
少しも目が離せない
・・・誰かに奪われやしないかと

瞳に彼女が映らない
それが彼の心を苦しめる

いっそ、想いのままに

近頃、切にそう思う
だが・・・


日暮れ間近、彼は見つける
声をかける・・・ことはできなかった

紅い光りに照らされた、その姿がとても綺麗で
その美しさに・・・自らの掌をみる

血塗られし過去
赴くままに屠るその姿
それは・・・

飢えた狼

その本能のままに食らいつくす
すべてを・・・


輝ける姿に見とれる
が、その度に・・・自らの闇が覗く

おまえに
彼の輝きを手にする価値はあるのか?

彼女が
それを認めると思っているのか?


耳を塞げども、声は止まない
だが分かっていた

たとえどれほど非難されても
もう、輝きなしには生きられない
だから・・・けれど・・・

佇む彼女を、ただ見つめていた
迷いは尽きることなく、彼を苦しめていた


自らの闇に惑わされなければ、みえていただろう
置かれしその場所が・・・

女神に付き従う
惹かれた想いのままに
では、従えしモノは?

その願いが強くなければ、きこえただろう
震えし声が・・・

狼は飼い慣らせぬ獣
側にあるには危なきモノ
なら、なぜ連れる?

纏し囲いが薄ければ、かんじただろう
誘いし香が・・・

最も近きモノに
その存在に与えし心の居場所
そは、いかに?

答えは・・・・同じ故に・・・

女神に分からぬはずがない
側にありしモノの闇が・・・
それでもなお、共にあるのは・・・

彼の者もまた、その存在を求めているから

すれ違いし心と心、その命運を握るのは
やはり・・・


そに気づくことなく
ただ彼は、声なき叫びをあげていた