『スレイヤーズ高校』〜密着・24時間〜







「……う〜〜ん……リナぁ……」
    ―――ガウリイ……大好き(はぁと)
「リナ……う…ん……オレも愛してる……」
    ―――ガウリイ……
「……リナ……」
―――ジリリリリリリリリ…
「んぁっ!?」

AM6:00
けたたましくベルが鳴った。
なんとなくまだぼんやりとした頭で音の発信源を探す。
……あれか……
オレは枕元の目覚まし時計を止めて、再びリナの待つ眠りの世界へ―――
……行っちゃまずいだろっオレっっ!!
慌てて起きる。
そして徐にベッド脇の写真を手に取った。
1週間前、オレの可愛い恋人がこっそりと入れていった写真だ。
前は修学旅行の時に、さり気なくリナたちのグループと一緒に写真を撮り、自分
も写ってるということで堂々とリナの写真を手に入れて、それを飾ってたわけだ
が……ゼルガディスとアメリアが……はっきり言って邪魔だった。
それが今は―――
「おはよう、リナ(はぁと)」
浴衣姿で微笑んでいる彼女の写真に口づける。
当然、写っているのはリナだけ。
前はゼルとアメリアも写っていたし、オレも写ってたから、軽く抱き締めるくら
いしかしたことがなかったんだけどな。
写ってるのがリナ一人の今、オレは心置きなくリナの写真にキスできるようにな
った♪
……本当はリナに直接したいんだけどなぁ……。
―――ぶちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……
     ―――1分経過―――
―――ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……
     ―――3分経過―――
―――ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……
     ―――5分経過―――
「……ぷはぁっv
 よ〜〜しっ今日も1日リナのために頑張るぞぉ♪」

AM6:30
とりあえず適当に飯を食って、着替えて駅に向かう。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!」
……この電車に乗り遅れたら、リナと校門から教室まで一緒に行けないんだっ!
それは嫌だっ! 絶対に嫌だっっ!!
オレは少しでもリナと一緒にいたいんだっっっ!!!!!
遅刻ギリギリのリナと、校門から教室まで一緒に走るのがオレの毎朝の日課だ。
その理由は3つ。
1つはさっきも言ったが、少しでも一緒にいたいから。
2つ目は、リナに近づく野郎どもをさり気なく牽制するため。
そして3つ目は―――
階段を駆け上がる時にチラリとのぞく、リナの制服のスカートの中を他のやつに
見せないためっっ!!!!!
……ま、オレは特別だけどな♪
そんなわけでオレは駅へと急い……
―――ピンポーン…
   パタっ
なにぃぃぃぃぃいいいぃぃぃいいいぃぃぃぃぃっっっ!?!?!?!?!?
突然改札機が閉まり、オレの行く手を阻む。
たっ…たかが改札機の分際でオレとリナの邪魔をする気かっっ!?!?!?
……くっ……も・もう1回……
―――ピンポーン…
   パタっ
な・何故だぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁっっ!?!?!?!?!?
「……あれっ……定期が切れてる……?」
……………………………………。
しまったぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁ
今、夏休みなんだったぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!

  ―――夏休み リナに逢えない 夏休み(T_T)
               ガウリイ=ガブリエフ心の俳句―――

とぼとぼとマンションに帰り、ぼーっと過ごす。
「……リナぁ……」
そう言えば、もう1週間もリナに逢ってない……。
「……夏休み、か……」
すっかり忘れてたぞ。このリナと逢えない忌まわしい期間のことを……。
……あれ? そういえば……
―――がさごそがさごそ
オレはある事実に気付いてそこら辺を漁る。
「ないっ!」
―――ダダダダダ…
ダッシュでマンション入り口の郵便受けまで行き、自分の郵便受けを覗き込む。
手紙が、何通か届いていた。
だが……
「ないっっ!!」
オレの目当ての手紙は来ていなかった。
「何故だぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁっっ!?!?!?」
何故なんだっ……?????
どうしてリナからの暑中見舞いが来てないんだぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?!?!?!?!?
オレの手の中で、科学教師・ゼロスの残暑見舞いが、くしゃりと音を立てて握り
潰された。

しばらくマンションの入り口で黄昏ていたが、オレはあることに気付いた。
「ふっふふふふふふふふふ……」
自然と唇から零れる笑み。
そうだっ郵便配達が1日1回だと誰が決めたっっ!!!!!
午前中は不慮の事故で届かなかったようだが、午後にはきっと届くっっ!!!
ふっ…そうだよな……。
リナは照れ屋だからなぁ……(はぁと)
手紙もリナと同じで照れてなかなかオレの胸に飛び込んで来てくれないんだな?
くぅぅぅぅぅうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっどこまでオレを焦らせば気が済
むんだっリナのやつぅ(超特大はぁと)
思わずこっちから押し掛けて行って抱き締めたくなっちまうじゃないかぁv
「くくくくくくくくくくく……」
「お母さ〜んっあのお兄ちゃん変っ!」
「しっ! 見ちゃいけません!!」
「くっくっくっくっくっくっくっくっくっ……」

それからオレはマンションの入り口で郵便配達を待ち続けた。
1時間が過ぎた。
まだ来ない。
2時間が過ぎた。
まだ来ない。
3時間が過ぎた。
まだ来ない……
遅い。遅すぎるっ!
………………………………はっ!?
まさか配達途中でどっかの野郎がリナの手紙を盗んだとかっ!?
い・いかんっこのままではリナがせっかくオレに書いてくれた手紙がオレに届か
ないじゃないかっっ!!!!!
くっ…こうなったら郵便局へ直接殴り込みだっっ!!!!!
「……リイ?」
待ってろよ、リナっ!
「ガウリイ?」
オレ宛のリナの手紙を横取りするやつなんか、叩き斬ってやるっっ!!
「ガウリイってばっっ!」
―――すぱこーーーーーんっ
「……へっ?」
「まったくっっ!
 人が呼んでんだから返事くらいしなさいよっ!!」
ぼんやりと視線をやれば、右手に何故かスリッパを握り締めた愛しい少女の姿。
「………………………………リナっ(超特大はぁとv)」
夢じゃないよな? 幻でもないよなっ?
―――がばっ
しっかりと腕の中に抱き締める。
「ちょっ…ガウリイっ!?
 放せってば〜〜〜〜〜っっ!!」
腕の中でリナがジタバタと暴れている。
……夢じゃない……幻でもない……幻覚なんかでもない……(感動v)
「リナぁ〜〜〜〜〜vvvvvvvvvv」
―――ぎゅぅぅぅぅぅううううううぅぅぅぅぅぅぅうううううぅぅぅぅぅ…
オレは嬉しくなってついついリナを思いっきり抱き締めた。
すると急にリナが暴れるのをやめた。
なんとなく不審に思ってリナの顔を覗き込むと……
「ぐっ…苦しい……」
赤くなったり青くなったりしていた。
「ど・どうしたんだリナっっ!?!?!?!?!?」
外にいたから日射病になったのか? それとも熱射病かっ?
ああっともかくオレの部屋で少し休もうっ!
……んっ? なんだか呼吸が荒いぞっ!? 酸素が足りないのかっ!?
よし待ってろっ! 今オレが人工呼吸するからなっ!!
―――ちゅぅぅぅぅぅぅううううううぅぅぅぅうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…
「んっ…んんんんんっっ」
ぐったりとしつつもオレの胸を手で押し返そうとするリナ。
「ん? なんだリナ?」
オレは仕方なくリナの唇から己のそれを放す。
「はぁっ……なっ『なんだリナ?』じゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっっ!
 あっあんた……こんなトコでいきなし何すんのよっっ!!!!!」
何って……?
「人工呼吸。
 だってリナ、なんだか苦しそうだったから……」
「誰の所為じゃぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
―――すぱこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっっ
本日2発目のスリッパがオレの顔面に直撃した……

「うわ…何よこの部屋は……」
あの後―――
リナはオレの部屋に来た。
本人は「た・たまたま買い物で近くに通りかかったから……」とか言ってるが、
リナの持ってきた買い物袋は、リナの自宅付近のスーパーのものだった。
……オレのためにご飯作りに来てくれたんだよな(はぁと)
くぅぅぅぅぅぅうううううぅぅぅぅぅぅっっ可愛いぞっリナっ(超特大はぁと)
「これじゃ、ご飯作るより掃除が先ね……」
てきぱきとオレの部屋を片づけるリナ。
掃除が終わると、今度は夕食の支度……
「リナ、何か手伝おうか?」
「あっ…じゃあお皿取って」
……こうしてるとなんかオレたち、新婚さんみたいだな(はぁとv)
ああっオレ幸せだ〜〜〜〜〜vvvvv
リナの作った美味しいご飯♪
風呂にも入ったし、オレとしては、このままリナも食べたいんだが……
「じゃ、あんまり遅くなんないうちに帰るね」
「リ・リナっ!?
 ……その……今日は家に泊まっていかないか?」
「だ〜〜〜めっ!
 明日アメリアと図書館で朝から勉強する約束してるんだからっ」
断られちまった……。
前にリナに
「あたしが『いい』って言うまで、その……手、出さないで……
 本当にあたしが大切なら」
とか言われて……約束しちまった手前、無理強いできないんだよなぁ……。
ものすご〜〜〜〜〜く名残惜しかったが、オレはリナを家まで送って行った。

PM9:45
リナの家から戻ってきて、何気なく見た郵便受けには、リナからの残暑見舞いが
届いていた。
待ちに待ったリナからの手紙の内容は……
「………………くぅ〜〜〜〜〜っリナぁ〜〜〜〜〜(はぁと)」
可愛すぎるぞリナっ(はぁと)
オレ、生きててよかったぁ〜〜〜〜〜v
リナっ! オレこのハガキ、肌身離さず持ってるからなっv
……でも待てよ?
肌身離さず持っていたら、せっかくリナがオレのために一生懸命書いてくれたハ
ガキがくしゃくしゃになってしまう……
  ―――考え中―――
30分経過。
………………………………はっ! そうだ定期入れ……!!
いや、ダメだっっ! あれではハガキを折るか切らなければならん……
  ―――考え中―――
1時間経過。
………………………………そうだっ! 写真立てに入れて……
「これでよし♪」
オレはじぃ〜〜〜っとリナの残暑見舞いをみつめ……んっ?
ってしまったっっ!!! これではハガキの片面しか見れないっっ!!!!!
  ―――考え中―――
2時間半経過。
くっ……オレは……オレはっっ
「どうしたらいいんだぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?!?!?」
―――ドンドンっ
「ちょっとガブリエフさんっ!
 今一体何時だと思ってんですかっっ!!」
真剣に悩んで思いっきり叫んでしまったオレは、管理人さんに怒鳴られた……
……た・たしかに夜中の2時に叫ぶのはマズかったよなぁ……(滝汗)
う゛〜〜〜っっでもどうしたらいいんだぁ?
………………………………。
考えるのはオレの役割じゃないよな。よし、明日リナに訊こう。
……あ、でも明日どっか行くようなこと言ってたよなぁ……う〜〜ん…
そうだっ! 夜ならいるよな? うん、夜行こう♪
そうと決まればもう寝るか……
「おやすみ、リナ(はぁと)」
朝と同じように、浴衣姿で微笑んでいるリナの写真に口づける。
おやすみのキスってやつだ♪
でも……昼間のリナの唇は柔らかかったなぁ……(はぁと)
―――ぶちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……
     ―――1分経過―――
―――ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……
     ―――3分経過―――
―――ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……
     ―――5分経過―――
「……はぁっv
 よ〜〜しっ明日はオレがリナの家に行くぞぉ♪」
そしてオレは、1週間前にリナがこの部屋に立て籠もった時、リナにバレないこ
とを祈り、そして無事だった“等身大リナちゃん抱き枕(命名・ガウリイ)”を
抱いて眠りについた……
「……やっぱりリナ(本物)の方が抱き心地いいんだけどなぁ……」


おわりっ(逃)