『スレイヤーズ高校』〜恋心〜







「わたしは……クリームソーダお願いします☆」
「あたしはミルクティー♪」
「リナさんっこれ、今朝配ってたの貰ったんです!
 2つ貰ったんで、1つリナさんにあげようかと思って……」
「へー…これってあの新製品のシャンプーとリンスでしょ?
 あの『髪、さらさら』とかって。……ありがと。
 ところでさ〜〜イルマード旅行の件、どうなったの?」

  彼女はいつもミルクティー 駅のそばの喫茶店で
  新しいシャンプーとリンス そして旅行の計画が話題


「リナ」
「あっ…ガウリイ先生!」
「なによ? 何か用?」
「……すまん。忘れた……」
「このクラゲ教師ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!!!」
……言えるかよ……
「アメリアとじゃなくてオレと二人で旅行行かないか?」なんて……

  話をしたいけれど ヤボな性格がばれちゃまずい


「用がないなら帰るわよ?
 これからアメリアと一緒にケーキ食べ放題に行ってくるんだから♪」
「ケーキ食べ放題?」
「ああ〜〜〜っっリナさんっ!
 もう食べ放題の時間始まっちゃいますよ!?」
「なんですってぇ〜〜〜!?」
「先生っ思い出したらリナさんに電話してください!
 リナさんっ急ぎましょうっっ!!!」
「……そ〜ゆ〜わけだから! じゃっ!!」
「なっ…ちょっと待てよ!
 おい、リナっっ!! リナ〜〜〜」

  どうしよう ほかの娘がじゃまする こんなとき妙に仲がいいよね
  これが女の連帯感なのか 困るね 先生、とても


「ひぃっく…ぐすっ……ゃだ……」
「リ・リナ!?
 なんだ!? どうした!? 何があったんだっっ!?」
「……でた…の……」
「なにが?」
泣きながら鞄を指さすリナ。
その先には―――
「……なんだナメクジか……」
リナがオレに抱きついてくる。思わず抱き返す腕に力がこもるオレ。
……泣き顔も可愛いよなぁ……
今ちょうど誰もいないし、「オレと付き合ってくれ」って言ってみようかな?
「う゛〜〜〜早く取ってよ〜〜っっ!!」
「待ってろ。今取ってやるから」
「……うん……」
「……ところでリナは何でナメクジ嫌いなんだ?」
「ぅ……聞かないで……」

  すこし長めの髪揺らして泣いているあの娘を見た
  なにかな、なんなんだろうなベイビー
  涙かわいや つきあいたい


リナ……お前さんは一体いつオレの気持ちに気付いてくれるんだ?
……恋愛、かぁ……ルークにでも相談してみるかな?
「俺のミリーナ(はぁと)
 一時間も会えなくて寂しかっただろ? 逢いたかったぜ……」
「私は寂しくなんかなかったわ。
 それに『あなたの』じゃあありません」
「ミリーナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
……いや、あいつも自分のことで精一杯だろーし……なんか笑われそーな気がするからやめとくか……

  ●●に相談しようか、でもたぶんひやかされるからやめとこう


「えーっと…今日の授業は……
 『妊娠の仕組みについて』だ」
……あぁぁぁぁ…こんなのわかってるさ。オレが知りたいのは『妊娠の仕組み』じゃなくて、そこに辿り着くまでの『リナの口説き方』なんだっっ!!!!!
「……先生?
 急にしゃがみ込んで…どうしたんですか?」

  どうしよう 授業の内容は こんなとき ぜんぜん使えません
  きびしいね 人生というのは なかなか 先生、とても

「リナさんっもう決まりましたか?
 今年の卒業パーティのパートナー♪」
「えっ? 卒業って……あと半年も先のことじゃない?」
「何を言ってるんですっ!
 今のうちからパートナー捜しておかないと、参加できなくなりますよ!?
 卒業パーティーで一緒に踊ったカップルは幸せになれるって
 ジンクスがあるから、人気のある人は今から押さえておかないとっっ!!」
「あたしは……」
「リナさ〜ん♪
 ……誘いたい人、いるんじゃないんですか?」
「べっ別にいないわよっ!」
真っ赤になるリナ。
……そっか……好きなやついるのか……けど……オレは……

  できれば いっしょに踊りたい きらきらと 光を浴びて二人
  ほんとは だれか好きな人が いること 知ってる けれど


―――教師は生徒に恋愛感情を持ってはいけない―――
誰が決めたんだよ、こんなこと……
ルークのように正面切ってアプローチもできない。
見守るだけの毎日―――
理性で押さえられる崖っぷちで、オレは今日も欲望と戦う。
「リナ……」
いつまでこの戦いは続くのだろうか……

  どうしよう うまくいかない恋 こんなとき もっと大人になりたい
  だれもが悩んだことなのか まったく 先生、つよく

「アニキ〜〜」
―――がばっ
不良に絡まれた用務員のランツがしがみついてくる。
「助けてくださいよ〜〜〜」
「お前なぁ…」
オレの方を見ると不良達は逃げていった。
いや、正確には―――
「リナ!」
音楽室から教室に戻るリナが視界に入った瞬間、
オレはリナの所へと走り出す―――
「アニキっ
 おれ、来年から大学に通いなおすことに……アニキ?」

  抱き合った仲間ともいつかははなれていくかもしれないけど
  二度とは戻らない時間を 笑って 歌って ずっと

「オレより遅れて教室入ったら遅刻だからな」
―――だだだだだだだだ…
廊下を曲がって、階段に差し掛かったあたりで、オレはリナの後ろをぴったりとマークする。
「おにょれ抜かれてなるものかっっ
 こうなったら必殺・二段抜かしっ!」
理由はたったひとつ。
「お・おいリナっ!?」
オレがぴったり後ろにいるからいいものの、お前さん下から丸見えだぞ?
……他のやつには見せてやらんけどな……おっ、今日は白…か……♪

  忘れない いつまでもあの恋 なくさない胸をたたく痛みを
  汗かき 息はずませ走る 日々はまだ 今も 続く


「リナ……」
「? 何? ガウリイ先生……」

  忘れない 恋心
  いつまでも 恋心