被保護者もつらいよ








あたしは最近胸が痛くなる。
あいつに「子供扱い」されるたびに……

―――コンコン…
「ガウリイ、起きてる?」
ノックと同時に声をかける。
ここ最近、あたしはよくガウリイの部屋を訪ねている。それも夜に。
こんな時間に「ちょっとマズイかな?」とも思うけど。
あまりにもガウリイが何考えてんのかわからないから。
いくら「保護者」だといっても所詮は自称。
あたしはあいつを「保護者」だなんて、とてもじゃないが見れない。
それなのに。
あいつはいつも「子供扱い」。
あいつがあたしを「子供扱い」するたびに、あたしがどれだけつらくなるか……
それをあいつはわかってんの?
……わかってないんだろ〜なぁ……あいつクラゲだし。何にも考えてないだろー
し……。
だけど…だから。こんな夜中にあいつの部屋に行ったりして、ガウリイがあたし
のこと、「被保護者」とか「子供」とかじゃなくて、ちゃんと「一人の女性」と
して見てくれてるのか探ってるんだけど………………。
あのクラゲに探りを入れても、はぐらかされるだけで今のところ収穫はナシ。全
然わかんなかったりするのだ。これが。
だから「今日こそは!」とか思ってお風呂に浸かりながらいろいろ対策を練って
みたのだ。まあ……その結果が「あのクラゲ頭には直球ストレートに訊くっきゃ
ない!」ってのがちょっと虚しいが……。
「ガウリイ? もう寝ちゃったの?」
この時間ならまだギリギリ起きてるはずだけど……。
「いや…起きてるけど……」
よっしゃ! 今日こそ訊き出しちゃるっ!
「じゃ、入れて♪」
そう言ってしばらくドアの前で待つが、なかなか開かない。
ちょっと両手が塞がってるので、あたしからは開けられない。
う〜〜〜っっ早く開けなさいよっ!
「ちょっとガウリイ! 早くしなさいよ」
―――かちゃっ…
あたしがイライラしはじめた頃、ようやくガウリイはドアを開けたが…そのまま
動かない。
「??? 入るわよ?」
あたしは素早くガウリイの横をすり抜けて、ベッドの脇にあるサイドテーブルに
持ってきたお酒のビンとグラスを置く。
あ〜重かったぁ……。
ベッドに座ってガウリイが椅子に座るのを待つ。
「リ…リナ……お前……」
ガウリイが何か言いかけるが、今は無視!
「飲もっ♪」
持ってきたお酒をグラスに注ぐ。
「へっ?」
あれっ?ガウリイ何かぼぉーっとしてる……。ま、こいつがボケーっとしてんの
はいつものことか……。気にしない気にしない!
「はい♪」
ガウリイにグラスを渡して、あたしは一口飲む。
「美味しい(はぁと)」
うん。ホントに美味しいわ、これ。
これなら結構飲めそう(はぁと)
もっとも少しくらい酔わないと「あたしのことどう思ってる?」とか「いい人っ
てゆーか……好きな人、いないの?」なんて恥ずかしくって訊けないから、多少
無理しても飲む気だったんだけど……これなら全然問題ナシ♪
ガウリイってある程度以上飲むと、酔ってた時のことは次の日にはキレーさっぱ
り忘れるとゆー性質があるからね〜。記憶に残らないってわかってればこっちも
訊きやすいし……これを利用しない手はないわ♪♪♪
さて……ガウリイも飲んでるかな?って……
「あれ? ガウリイ全然飲んでないじゃない!」
……何か妙に静かだし……ひょっとして体調悪いとか……???
ガウリイの顔を覗き込んでみるが、体力だけが取り柄なだけあって元気そうだし
……。
じゃあ何で?
「いや…だからリナ……」
あ……まさか「子供がこんなアルコールの強い酒なんか飲むんじゃない」とか言
うつもりとか……?
―――むかっ…
「なによ! せっかくガウリイにも飲ませてあげようと思ったのに……いいわよ
! あたしが全部飲んじゃうから!!」
あたしは素早くガウリイのグラスを取り上げる。
何よガウリイのばかっ!
一気に呷る。
「うみゅぅ?」
……ちょっとキツかったかもしんない……
―――ぱたっ…
……はれ?
視界が暗転する……。

どれくらい経ったのだろうか……う〜ん……なんか重いわね……。
うっすらと瞼を開くと、目の前が金色だった……って、これ…ガウリイの髪?
………………へっ?
うきょわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ
っっっっ!? !? !?
ちょっ、な・ななななななななななななななななななななに? どーなってんの
???
何でガウリイがあたしの上に寝てるわけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ??
???
一気に意識が覚醒する。
慌ててガウリイを押し退けようと思って、ふと自分の手がガウリイの髪の毛を握
っているのに気が付いた。
……そっか……あたしが髪の毛引っ張っちゃったから…そのまま倒れ込んだんだ
……。
でも……どうして何にもしないの? 「保護者」だから? あたしはあんたのこ
と「保護者」だなんて思ってないんだよ? それとも……やっぱりあたしが「子
供」だから? あたしはあんたの「被保護者」なのかもしんないけど…もう「子
供」じゃないんだよ? べ、別に手を出してほしいってわけじゃないけど……せ
めてちょっとは動揺するとか何か…リアクションの一つもしてくれないわけ? 
それってなんか……
―――つきん…
胸が痛い……。
「ん……」
―――ぎゅっ…
思い切ってガウリイの首に抱きついてみる。
非常事態の時は別として、いつまならこんなこと恥ずかしくってできないんだけ
ど……大胆にもやれちゃうあたり酔った勢いってやつかもしんない。
……これなら……いくら何でも動揺ぐらいしてくれるよね?
本当は酔った勢いでいろいろ訊き出すつもりだったんだけどな……。
…………………………。
ガウリイは動かない。動揺している素振りさえ、ない……。
抱きついてみても何の反応もしてくれないの?
そんなにあたしって魅力ないの? 「お子様」なの?
……う゛っ……やばっ……涙、出そ………………っっっっっっっ!!!
「……んっ……がうり……」
やだ…思わず声、出ちゃった……涙声になってなかったよね……???
―――つきん…
胸が痛いよぉ……ガウリイ……どうして何の反応もしてくんないのよ……あたし
ばっかり…ばかみたいじゃない……っっ!!!!!
「……ガウリイ…の…ばか……」
すこしは狼狽えるくらいしてよっ!
あたし…あんたのこと…………………………ガウリイのこと………………………

―――そのまま……あたしの意識は闇に沈んだ―――

―――翌朝。
ガウリイの目に隈を発見。
ひょっとして一睡もできなかったのだろうか……?
……あたしのこと意識して眠れなかったとか? …な〜んてね♪ そんなわけな
い、か……。
結局……あたしってあいつに「子供」としか思われてないみたいだけど……でも
…だけど、いいんだ。少しずつリナちゃんの魅力を教えてやるんだからっ! こ
のリナ=インバースの心をここまで掻き乱すやつなんて、あんただけなんだから
…絶対あたしに惚れさせてみせるからねっっ!!! ふっふっふ…覚悟しなさい
よ! ガウリイ(はぁと)
ま・ず・は「保護者」と「被保護者」の関係から脱出しなくちゃね☆
なまじ「被保護者」だなんて思われてるから何の意識もされないんだろーし。
ま、あいつに「保護者」やめさせるなんて、ある意味シャブラニグドゥと戦った
時よりキビシイもんがあるよーな気もするけど。
「子供扱い」はつらいんだから! 絶対やめさせてみせるわ!
あいつが「保護者」をやめるまで、あたしはあたしの全魅力を懸けて、あいつの
心に挑戦し続けるからねっ! ガウリイが振り向いてくれるまで、ぜーーーーー
っっったいに諦めないわよっ(はぁと)
さ〜てとっ! 頑張るぞーーーっっっ!!!!!

End.