保護者はつらいよ |
オレは最近眠れない。 理由は偏に・・・・ ――コンコン、 「ガウリイ、起きてる?」 ノックと同時に聞こえてきた声に、オレは戸惑う。 ここ最近、リナはよくオレの部屋を尋ねてくる。それも夜に。 こんな夜――いや、もう夜中といえる時刻に、いくら「保護者」だと思っていても、 年頃の女が男の部屋に訪ねてくるってのは、ちょっとマズイんじゃないか?襲ってくれと言っているようなものなんだぞ?だいたい「保護者」なんて言ったって、オレが自分を抑えるために自らに枷を嵌めただけのものであって、所詮は自称。いつ枷が外れるかもわからないんだぞ?それをお前はわかっているのか? オレのこんな想いを知ってか知らずか、再びリナが声をかけてくる。 「ガウリイ? もう寝ちゃったの?」 「いや・・・起きてるけど・・・・」 「じゃ、入れて♪」 入れてって・・・・だからお前わかってないだろ? オレだって「保護者」である前に「男」なんだぞ? しかもお前に惚れてるんだぞ? 「ちょっとガウリイ!早くしなさいよ」 ・・・・・・・・・・・願わくは・・・どうかリナがパジャマなんかじゃありませんように・・・。 ――かちゃっ。 そう願いつつオレはドアを開けた。 そしてそのまま固まった。 「??? 入るわよ?」 そう言ってオレの脇をすり抜けてったリナは―― ・・・・・・・・・・をい・・・・・・・・・・パジャマ姿だよ・・・・・・・・・・。 しかも風呂上がりなのだろう。ほんのりと赤く上気した顔。しっとりと湿り気を帯びた栗色の髪。そしていい匂い・・・・。 これで襲うなって方が無理だぞ・・・・? ・・・・はぁ・・・オレって我慢強いよなぁ・・・・。 って、ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!?!?!?!?!? 頼むからベットに座るのはやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっ!!!! ・・・・・オレの心からの絶叫も虚しく、リナはベットにちょこんと座ると脚をぶらぶらさせている。 オレはわざとリナから視線を外して近くにあった椅子に腰掛ける。 こ・・・これは・・・・・一言くらい忠告して、早めに部屋に戻ってもらわないと・・・・いくらなんでも・・・・・・ 「リ・・リナ・・・お前・・・」 「飲も♪」 「へっ?」 見ると嬉しそうにグラスに酒を注ぐリナの姿。 をいをい・・・・どっから出したんだよその酒は? 「はい♪」 軽く首を傾げながらオレにグラスを渡す。 その仕草がすげぇ可愛い・・・(はぁと) リナがグラスに口を付け、一口飲む。 「美味しい(はぁと)」 風呂上がりで上気した顔がますます赤く色付いて、何ともいえず色っぽい・・・・・。 ―――ゴクリ。 生唾を飲み込む。 ・・・・今すぐリナを抱きたい・・・・。 ここで酒なんか飲んだりしたら・・・・オレは自分を止める自信がない。 自信がないんだ! これがどーゆー意味かわかるよな、リナ? 「あれ? ガウリイ全然飲んでないじゃない!」 ・・・・・わかってないよ・・・・こいつは・・・。 ふいにリナがオレの顔を・・・っそんなに無防備に覗き込まんでくれっっっ!!! ――クラリ。 オレの理性に300ポイントのダメージ・・・。 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……人がせっかく抑えてるってぇのに…… ちくしょーっ! ホントに襲っちまうぞ!? 「いや…だからリナ……」 「なによ!? せっかくガウリイにも飲ませてあげようと思ったのに……いいわよ! あたしが全部飲んじゃうから!!」 リナは素早くオレのグラスを取り上げると、一気に呷って…… 「うみゅぅ?」 ―――ぱたっ… そのまま寝てしまった……。 ………………………………どーしろとゆーんだ、これは………………????? ―――1分経過… と・とりあえずちゃんと寝かせよう! 風邪でもひいたら大変だしな。うん。 どことなくギクシャクした動きでリナを抱き上げ、ベッドに寝かす。 あとは掛け布団を掛けてやれば…… ―――くいっ… 何かに引っ張られる。 「?」 !!!!!!!!!! リナの手がオレの髪を掴んでる……って、をい! ちょっと待てリナ! オレは今、一刻も早くお前の前から離れなきゃマズイんだ! オレの理性がかろうじて残っているうちにっっっっっ!!!!!!!! これ以上理性が壊れないうちに部屋から出なければ……っっ!!! だから…だからっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!! 「……ん…ガウリ……」 うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜っっっっっっ!!! そんな無防備な寝顔晒しながらオレの名前を呼ばないでくれぇぇぇぇぇぇぇっっっ! ……オレの理性に500ポイントのダメージ……。 あ゛あ゛あ゛…理性の崩壊が近づいてくるっっっ!!!!! 「リ・リナっ!」 ―――にこっ うぁ…微笑ってるよ…なんでこんなに可愛いんだよこいつは……。 あ゛あ゛っ……オレの理性に800ポイントのダメージが……。 ―――ぐいっ… リナがさらにオレの髪を引っ張る…ってマジでヤバイってこれはっ! とっさに両手をついたはいいが……この体勢って……見ようによってはオレがリナを 押し倒してるように見えるって、つまりっっ! リナの上に覆い被さってるっっっ!? うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっ!!!!!!!!!! 頑張れオレの上腕二頭筋と上腕三頭筋っ! 何としてもこのまま抱き締めたりしないように手をついたままの状態を保持するんだ! これまでリナを護るために必死で鍛えてきたんだろ!? 腕とう骨筋が悲鳴をあげても耐えるんだっ! こんな体勢でリナが起きたら間違いなくこの街が消えるっっ!!! そして何よりリナが俺の前から消えてしまうかもしれんっっっ!!!!! うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!! !!!!!! ―――15分経過… ハアっ…ハア……ハアっ……………… ふっ…腕の筋肉もオレの理性も絶叫をあげている……っっ!!! なまじ最初に「保護者」だなんて言っちまったのがまずかったんだよな……。 「保護者」だなんて言った手前、手ぇ出しにくいし……。 せめて「旅の連れ」とか言っておけば…いや、それじゃあリナはオレと旅しちゃ くれなかっただろうが……って、それよりも今はこの状況を何とかせねばっ! ―――30分経過… う゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……もう限界だっっ!!!!! ―――ばふっ… オレはリナの上にのしかかる。 甘い香りがオレをくすぐる……。 「ん……」 リナの腕が伸びてきてオレの首に巻き付く……。 ―――ぎゅっ… !!!!! むっ・胸があたってるっ! リナ、胸が!!! ………あ………柔らかい………………ってオレっっっっっ!!!!! ―――オレの理性に1500ポイントのダメージっ! う゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛………………オレは今試されてるっ……試されてるぞぉぉ ぉぉぉっっ!!!??? 「……んっ……がうり……」 ―――ぶちっ… オレの理性……キレたぞリナ……もう知らないからな? 覚悟しろよ? オレは欲望の赴くままリナの顔に自分の顔を近づけ…… 「……ガウリイ…の…ばか……」 ……………………………………………………あ゛ぅ゛っ…………………………… 。 オレは今日もまた、眠れなかった。 手も、出せなかった……。 やっぱり最初に「保護者」だなどと言ったのが悪かったのだろうか……? 「保護者」が「恋人」に昇格することはあるのだろうか? 何にせよ「保護者」はつらい。 オレの理性は最早崩壊寸前だ。 オレはリナが一刻も早くこのことに気付いてくれることを今日も祈る……。 End. |