お祭りの夜は…










「ほまふり?」
おばちゃんの言葉に、あたしはご飯を食べるために動かしていた手を止め、
思わずそう聞き返していた。
「そう。うねめ祭りっていうんだよ」
あたしの言葉にうれしそうにおばちゃん―――今あたし達がいる、宿屋兼食堂の女主人である―――が答えた。
 あたし達の周りにはだーれも、客どころか従業員まで誰一人としていない。
なんでもおばちゃんの話だと、その「うねめ祭り」の準備に行ってて、客もそれを見にいっているらしい。
―――うねめ。この言葉を知っている人はあまりいないと思う。
というのも、うねめというのは(釆女)と言って、その昔栄えたヘイジョウ国独特の女官の呼び方だからなんだけど。
 そーいえば、今あたしたちがいるこの村は、亡きヘイジョウ国の領内で首都に近かったハズ。
なるほどそう言う名の祭りが残っていてもおかしくはないのだ。
「この祭りはね。この地方に伝わる『釆女物語』を伝える祭りなんだよ」
「『釆女物語』……?
あの、1200年も昔って言われている、あの『釆女物語』?」
「そうだよ」
若いのによく知ってるね。とおばちゃん。
この『釆女物語』って話、実は、前姉ちゃんと旅してたときに教えてもらったのよね♪
と、その時。なんとなーく悪い予感がしたのと同時に、今までずーと黙っていたガウリイが口を開いた。
「すっげー昔なんだな。ところでリナ。一つ聞きたいんだが……」
きたあぁ…
 彼、ガウリイは剣の腕は超一流。長身、金髪碧眼の上にあたしでもうらやましいほどの美形だが、
その外見にだまされてはいけない。なんてたってくらげ頭。
のーみその中にはふるふるのワカメが詰まっている。
あたしは瞳に狂気の光を輝らせつつ、
「何?あまりに馬鹿なことを言ってみなさい。フィリアからもらった、この
『モーニングスター改造版リナちゃん特製インバース印のぷりちぃスリッパ』でひっぱたくわよ?」
略して『とげプチスリッパ』を某所から取り出した。
「リナ…それ…スリッパ…なのか…?」
頬に冷や汗たらしつつ、つっこむガウリイ。
「そうだけど、なんか文句ある?
お望みなら…いまっ!すぐっ!…やってあげてもいいのよ?」
「じょ、じょうちゃん…それはちょっと…」
「いやっ…いいです…もう……」
何故かおびえきった顔で言うおばちゃんと、これまたおびえきった顔で首をぶんぶか振りながら言うガウリイは
無視することにして、先を促す。
「で、何?」
「いやな、さっきから言ってる"うねめ"ってうまいのかって……」
………ぶちぃぃぃ
「ガ・ウ・リ・イ(はあと)
かくごはできてるわねぇぇ!!」
どがぐしゃぁぁぁぁ(肉がつぶれる音)
ぶしゃぁぁぁぁぁぁ(血が吹き出す音)
       ・
       ・
       ・
       ・


 夜と静寂が支配する、夜の森の奥の奥。わずかな月光と光量を押さえた『明り』の光に包まれた湖。
そこが祭りの会場――ムース・レイクだった。
 幻想的―――このふいんきを一言で言うなら、これ以上はまる言葉はない。
近くに住むエルクやフェアリーソウルが飛び交うこの場が、『明り』の光と月光によって今までいた世界からきりはなされて、
どこか…知らない異世界に入り込んだような気がする。
…まぁ、辺りに夜店がないっていうのも原因なのかもしれないけど。
「なぁ、リナ。なんで夜店がないんだ?」
案の定、ガウリイもそう聞いてきた。
「神聖な場所なのよ」
「ふ〜ん。
…おっリナ!何か出てきたぞ!」
「えっ?どこ?」
「ほら、そこだって」
ガウリイが指差す方向を見るが、まったく持って何も見えない。
くやしいげどこいつ、感と目だけは人間離れしたやつ持ってるからなァ…
 しばらくして、何かが出てくるのがあたしにもわかった。
それは、数名の巫女だった。この地方の民族衣装で、白い着物と真紅のはかまって言うのを着ている。
これが、この地方の巫女の正装だそうで。
なんでも、結界の外の、どこかの国の伝統と似てるって前にフィリアが言ってたっけ。
 巫女さん達はこれから龍頭船っていう小船にのって湖を回り、花扇を水面に浮かべてこの祭りはおわり。
『お祭りの夜はすなおになろう……
――――それが…幸せへの近道になるから……』
巫女さんたちを送り出す笛の音とエルフ達の歌が、心地よく耳に響いてくる。
 やっぱし、お祭りっていいわよね。なんか、この時だけはすなおになれるっていうかなんというか。
……すなお…か…
……今、この場でガウリイに聞けたらなぁ…『あたしのことどう思ってるのか』って…
 ガウリイと旅をしてもう5年程たつけど、いつのまにかあたしは自称保護者としてついてきた彼を意識し始めていた。
さっさと『好き』って言っちゃえばいいのに、もし言ったら今のように旅ができなくなってしまうのが怖くて。
たった一言が言えない臆病な自分がいて。
「はぁ…」
おもわずため息が出てしまう。
「どうしたリナ?夜店がなくて落ち込んでるのか?」
のほほんとした声。
あーあ。なんであたしがこんなクラゲのために悩まなくちゃいけないのよ……
「なんでもないわよ。あんたの方こそなんか用事あるの?」
「ン?あぁ、…さっき言ってたあのふ…ふねみ物語ってやつなんだけどさ…」
「それを言うならう・ね・め。でしょ?」
クスクス
あいかわらずのクラゲ頭に、さっきまでの悩みもどこえやら。思わず顔が笑みをつくってしまう。
ガウリイってさ、どんなに小さなことでも人をなごませたり、幸せにする才能もってるのかもね。
「そうっだけか?」
「そうよ」
あきれた口調でかえすけど、すくなくとも、今のあたしは幸せだものね。
「いやな、その『釆女物語』ってどんな話しなのかなって思ってな」
「ふ〜ん。
まああんたのクラゲ頭でどこまで覚えているかわかんないけど。
一応、教えたげるわ。
いい?その昔、ここがヘイジョウ国って呼ばれてた頃のことよ。王のもとに春姫っていう釆女がいたの。
あっ、采女っていうのはその時代の女官のことよ。
さっきもいったけど。おぼえてる?」
「あぁ」
「へぇ…よくおぼえてたわね」
あたしはすなおに感嘆の声をだした。
だって、おのガウリイが一つのことをちゃんと覚えてるなんて?!
「のーみそ少しは復活してきたみたいね。このままそうだといいんだけど……」
「リナ…今、サラリとひどいことを言われたような気がするんだが……?」
ジト目でニラムガウリイ。
いいじゃない。別に。ホントのことなんだし。
「気のせいよ。
それでね、その春姫には故郷にだんなさんがいたんだけど…」
「ハイハイ!
リナ先生しつもーん!」
「ハイッ!ガウリイ君!」
「結婚してたのになんでまだ女官なんかしてたんだ?」
「う〜ん、あたしも詳しくは知らないんだけど…
そのころの結婚と今の結婚って仕組みがちがうのよね。
だから、場合によってはそう言うこともあったみたいよ」
「ふ〜ん」
とりあえず、納得した(らしい)ガウリイを無視して話を進める。
「でまぁ、だんなさんに会いたくて春姫は自殺に見せかけてまでして
故郷に帰るんだけど、もうその時にはだんなさんはすでに死んじゃってたのよね。
そっからバカな話しになるんだけど…」
あたしは小さく息をついて、
「春姫はさ、悲しみのあまり後おい自殺をしちゃうのよ。
悲劇って言えばそうだけど…バカじゃない?
これから、もっともっといろんな幸せがあるかもしれないのに。
おいしいものだってあるのに。
いくら悲しいからって自分の体まで犠牲にして良いわけないのに、死んじゃったのよ。
その人。
ね、バカな話でしょう?」
「どこがそう思うんだ?」
「どこがって…言ったとおりよ」
ちょっと戸惑うあたし。
…いや…そうストレートに聞かれても困るんですけど…
しかもちょっと語尾に怒気が混じってるような気がするしぃ……
「だから、どーいう意味なんだよ」
う゛っ………怖い…
あたしなんかしたっけ…?
 彼の放つ怒気におされて返答に困ったあたしは、逆にガウリイに聞き返して、話をそらすことにした。
「じゃぁ、何でガウリイはそう思うのよ」
「いや…何でって聞かれてもなぁ…」
ほら、あんただってつまてるじゃない。
そういってやろうといたら。
「リナが死んだらオレもそうするだろうなっておもっただけだし…」
「はぁ?あんた何言ってンの?」
あたま…とうとういかれちゃったとか?
 そしてガウリイはへーぜんと言った。
「オレは、リナのこと好きだから」
………………………
はい?

「それに言ったろ?
一生お前の保護者をするって。地獄までつきあってやるよ」
言ってあたしの頭をグリグリ。
普通ならここで『子供扱いをするな!!』って言ってたんだろうだけど、あいにくその時のあたしは、
そこまで思考がまわってなかった。
 …………………
 ええと、今の言葉を分析すると。よ。
 んと、えっと…
 そしてガウリイはとどめとばかりに、あたしの耳元でこう言った。
「リナ。愛してる」
そう…愛してるってことに…
ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!
ガウリイが…ガウリイが、あっ愛してるっ?!
あたしのことを?!

かああああああああああ

わかったとたん顔がどんどん赤くなる。
「うぇ?が…が…」
「リナ♪返事♪聞かせてくれよ♪」
うろたえるあたしとは対照的に♪つきで言うガウリイ。
くっそ―…
絶対こいつ、あたしの反応みて楽しんでる!!
こんなやつにあたしの気持ちなんて…ぜぇったい教えてやらないっ!
「し、しらないわよ!
こ、こんなクラゲ頭のことなんて!!」
「ふ〜ん。じゃぁ、これでも?」
言うと同時に唇に何かの感触。
えっ?
「んっ…」
きっキスぅ?
「リーナ♪」
こ…こうも簡単にあたしのファーストキスをとられるなんて?!
リナ=インバース一生の不覚よ!!
あぁっ!!なんであたしこんなヤツ好きになっちゃうのよ!!
「しっ、しらないわよ!!
だいたいねぇ……」
ぜっんぜんっすなおじゃないあたしの言葉に、何か仕組んでるようなガウリイの顔!!
まだ何か仕掛けてくるのかと思いきや。

ちゅっ

「こンのキス魔!!」
「まったく…いい加減すなおになれよ。
このひねくれ者」
「なっなんですってぇ!!」
「まだあるぞ。いじっぱりでお人好しで照れ屋……」
むかむかむかっ!!
いきなり人にき…キス…しといて、なによ!そのいい方わ!!
……あれ?でも、この言葉、どこかで聞いたような気がするんだけど…?
気のせい?
「自分より弱い奴にはとことん甘い奴だけど…
オレは、そんなお前が…好きなんだよ」
ボンッ
『好き』…その言葉にまた顔が赤くなる。
心臓がバクバクいって、破裂しそう…
 あぁ…やっぱしあたし、こいつが…このクラゲが好きなんだ…
「リナ。これがオレの今の自分のホントの気持ちだ」
 ガウリイの真剣な瞳が…これはウソじゃないって言ってる…
「もう…保護者なんかじゃなく、一人の男としてお前のそばにいたい」
―――じゃぁ、教えて…
「…なんで…だまってたの…?」
 なんで、『保護者だ』ってずっと子供扱いしてたのか。
 教えて。
 あたしがどれだけつらかったか、あんたにわかる?
 ガウリイは、すこし何かに後悔した目で、ゆっくりと言った。
「最初に保護者だって言っちまったしな。
だから…正直に言うと、怖かったんだ。自分の気持ちに気づいた時にはもう、
今のような生活ができなくなるかもしれないって思うと…な。
バカだよな…自分で自分の首、しめちまうなんてさ…」
 クスッ
「リナ…?」
…なんか…あたし達、バカみたい。
―――『保護者と被保護者』―――
 自分たちで作ったかべに、勝手に悩んで、すなおになれなくて…
ホント…ばか。
「ううん。続けて」
この時のあたしは、本当に幸せな顔をしてたんだと思う。
ちょっと、幸せすぎて、夢かもしれない…って思っちゃうくらいに。
「だから…リナ。オレのそばに一生いてくれ」
「それプロポーズ?」
「うーん。そうかもな」
「まったく。クラゲなんだから」
これはもう、一生治らないかもね。
「そう。クラゲなんだ。だからさ、教えてくれよ。
リナの気持ち。言ってくれなきゃわからないだろ?」
あたしの…気持ち…か…
まぁ、教えてあげてもいいかもね。
今夜はお祭りなんだし、今日一日ぐらいすなおになるのも悪くはないわね。
『――――お祭りの夜はすなおになろう……
――――それが…幸せへの近道になるから……』
って、さっきの歌にもあったしね。
「自分で認めてたらもうおわりね。…そうね…教えたげるわ。
ただし!…一回しか言わないわよ?」
「あぁ」
 そしてあたしは、小さく…ほんとに小さい声で言った。
「ガウリイ…好き」
「…リナ!」
見れば、ぱぁっとうれしそうな顔。
「ただぁし!!」
あたしはそのうれしそうな顔の前に一本指を立てると、
「あたしよりも先に死んで見なさい。
そんときは…一生ゆるさないから…!」
「…あぁ。わかった」
 言って3度目のキス。
 そして…あたしたちは、もう『保護者と被保護者』の関係じゃなくなった。
 でもこれがゴールじゃなくて。
 これから、また新しい旅がつづいていく…
 どこがゴールかなんてわからない。
 けど…それを決めるのはあたし達なんだから。
 だれにも、邪魔はさせない。

「リナ!行くぞ!」
「うん!」

――――お祭りの夜はすなおになろう……
――――それが…幸せへの近道になるから……













くぅぅぅぅっっあいりちゃん!!
ありがとうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ(感涙)
奈良の「采女祭り」と、福島の「采女祭り」のミックス祭り♪
良かったっすぅぅ!!!!!
歌も創作のよーで………良いっっ良いわよぉぉぉっっ(叫)
ガウリイの本音とキス♪トロトロっすぅ〜〜〜〜
最後のフレーズが、リナらしくて…飛鳥のお気に入りですvvv