彼の本気に彼女の憂鬱
〜番外編 あるバカップルの被害者達〜









――――バカップル――――
とは、あっちでイチャイチャ、こっちでイチャイチャするモノであり、大概本
人達に『私達ってバカップル』などと自覚がない場合が多い。
はっきりいって見ていて砂糖を吐きそうになり、後ろから蹴飛ばしたくな
るような代物である事は確かである。


今日はここに、そんなバカップルの被害を受けすぎて非常に困っている
方達に御集まり頂きました。
さぁ、バカップルに向かって思いの丈をぶちまけて頂きましょう!
被害者の皆さん思う存分どうぞ!!


なお、お名前は被害者の皆さんの切実なご要望により伏せさせて頂き
ます。
ちなみに「バカップル本人に直接言ってみては?」の問いには

「そんな恐ろしいことは出来ない!!」

と間髪いれずに答えてくれました。


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「俺からあのバカップルに言ってやりたい事は富士山を五個並べた高さ
位あ〜〜〜〜〜る!いいか、よく聞けガウ・・・・・・ふぐっ。」
被害者1はいきなり後ろから口を塞がれた。
「ダメです!バカップルの名前出したら私達全員まちがいなく殺されます
ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「名前は出さずに喋れ!俺はこんな事で死にたくない!!」
被害者2と3のあまりに切羽詰った表情に気圧され、首をカクカク振る被
害者1。

「コホン、いいかよく聞けバカップルの片割れ!喫茶店に入ってくそガキ
がケーキを注文した。で、ケーキの生クリームがくそガキのほっぺにつ
いてたからといって、俺の前っていうか人前で舌でぺろりと舐めるなぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁ!!その後、怒ったくそガキに殴られたのに『怒った顔も可
愛いなぁ(はぁと)』ってお前はアホかぁぁぁぁぁぁぁ!!俺だって俺だって
愛するミリ・・・・・・・ふがっ・・・・・・にほっぺをぺろりなんてしてもらった事
ないんだからなぁぁぁぁぁ!ちきしょーーーーーーー!!」
被害者1は窓から外に向かって叫んでいる。

「早い話が羨ましいんですね。」
「きっと奴の言いたかった事は最後の方だけだぞ。」
被害者2と3は顔を見合わせしみじみとため息をついた。
いきなりそれまで沈黙していた被害者4がぬっと顔を出した。
「バカはほっておいて二番手に私いかせて頂きます。」

「こ、恐いですミリ・・・・・さん・・。」
「め、目が血走ってるぞ・・・・・・・・。」
被害者2と3の背に悪寒が走った。


「ええ別に二人の仲が良い事はいい事だと思いますよ。付き合って三年
にもなれば人前でイチャイチャすることがあるのも理解できます。なにしろ
あれだけガウ・・・・・・さんが惚れ込んだわけですから・・・・・だけどだけど
・・・・・・・・。」

バキッ

どうやら持っていたペンを折ってしまったようである。

「喫茶店でほっぺをぺろりを見たルー・・・・・・・が『俺にもしてくれ』と泣き
ついてくるわ。手を恥ずかしそうに繋いでいるバカップルを見ると『俺も繋
ぎたい』といってうるさいわ・・・・・・・バカップルがケンカしてるのを見ると
『俺達もラブラブなケンカをしよう』と言い出すわ・・・・・・あげくの果てにお
酒を飲むたびにルークが『俺達ももっとラブラブに』とかなんとか言い出し
て愚痴をこぼすわ・・・・・・・・・私はバカップルの直接被害ではなく間接被
害を受けまくっているんです。もうストレスが溜まる溜まる、胃がよじれそ
うで・・・・・・・・ふふふ・・・・・・ふふふふ・・・・。」

「目がいっちゃってます・・・・・こわ、恐すぎます・・・・。」
「しかも、名前言ってるぞ・・・・・・・。」
被害者4のあまりの迫力におもわず後ずさりする被害者2と3。



被害者4の不気味な笑みもようやくおさまり
「それでは私『愛と正義』の名のもとに語らせて頂きます!」
「『愛と正義』でお前が誰かばれるぞ・・・・・・・・」
被害者3のツッコミもなんのその被害者2は椅子に片足を上げ、拳を掲げ

「バカップルのガウ・・・・・・・さんとリ・・・・・・・さんの『愛』すばらしいです!
『愛』は『正義』です。だから『愛』を所かまわず振り撒き、こっちでイチャイ
チャあっちでイチャイチャするバカップルはすばらしいです!!私も私もゼ
ルガ・・・・・・・ふがっ・・・・・さんとイチャイチャしたいんですーーーーー!!
ガウ・・・・・・さんがリ・・・・・さんに触れるみたいに私もゼルガ・・・・さんに
触れてほしいです!二人のようにあ〜んな事やこ〜んな事をしたいんで
すぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

被害者2興奮しすぎのため以後続行不可能。
結局、被害を訴えているのか願望を訴えているのか不明。


被害者3の顔は心なしか赤いようである。
「コホン。」
一つ咳払いをして
「友人として俺としても二人がラブ・・・・・ラブ(どうやらこの台詞が恥ずかし
いらしい)なのは良い事だと思うし末永くラブ・・・・・・ラブ(やっぱり恥ずか
しいらしい)であってほしいが頼むからガウ・・・・・、リ・・・・・・とケンカする
たびに俺の家へ踏み込んで来るのはやめてくれ!リ・・・・・もガウリ・・・・
とケンカするたびに無関係の俺を絞めあげるな!とにかく二人のケンカに
俺を巻き込むな。それにガウリ・・・・・・・俺の前でノロケまくるのもやめろ!
『昨日の夜はリナが可愛かったなぁ(はぁと)』って言われても俺はいったい
どういう反応をすればいいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー
ーーー!!」

被害者3日頃、沈着冷静?であるため、あまりのテンションの高さに酸欠
状態により続行不可能。




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以上、思う存分被害?をぶちまけて頂けた事と思います。
なお、この収録テープは別室でしっかりとバカップルご本人に聞いて頂い
てますので。



し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん


なんとも重い沈黙の後

「わ、私しばらく海外に留学して『愛と正義』を普及してきます。」
「ミリーナ、俺と一緒に夜逃げしよう!!」
「しません。私しばらく会社に休暇届を出して、どこか遠くへ。」
「俺は俺はこんな事で死ぬのか!?」




さぁ、皆さんは誰が一番の被害者だと思いますか?







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ちょっといいわけ
ガウリイとリナが出会って三年くらいたっている状況です。
約三ヶ月くらいご無沙汰していたにもかかわらず、なぜか番外編です。
すっかり忘れ去られている可能性もあるのですが、頑張って本編の『デ
ート編』に取り掛かろうと思いますので、よろしくお願いします。